独シュナイダー・ノイライター・アンド・パートナー(SNP)と富士通は、SAP S/4HANAへの移行支援で協業関係を強化していく。SNPグループは、SAPのERP製品の新バージョンへの移行支援や、企業のM&A(企業の合併と買収)などに伴うERPシステムの分割・統合に役立つ独自の方法論「BLUEFIELD(ブルーフィールド)」を持つ。国内では日本IBMやNTTデータグローバルソリューションズに続いて、富士通が3社目のビジネスパートナーとしてSNPの方法論を採用した。富士通では、S/4HANAへの移行を中心に2022年末までに国内外のユーザー企業およそ30社のプロジェクトを支援し、100億円の売り上げを目指す。(安藤章司)
左からSNP Japanの村出洋一社長と富士通の北澤誠部長、SNP Japanの横山公一CTO
ユーザー企業がS/4HANAを採用する場合、既存のERPから短期間でスムーズに移行できるかが大きな関心事となっている。既存のSAP製ERPでカバーしている要件や設定を一切変えず、そのままS/4HANAへ写し取る「ストレートコンバージョン」が最も手堅い手法とされるが、その場合「ユーザー企業はS/4HANAの新機能の恩恵が薄く、移行を支援するSIerにとっても提供できる価値が少ない」(SNP Japanの村出洋一社長)課題があった。
そこで、SNPグループでは現行機能を維持しつつ、業務プロセス改革の成果をS/4HANAに反映させることが可能で、IoTやAIなどのデジタル技術をS/4HANAと連携させるといった機能拡張にも対応する方法論「BLUEFIELD」と、この手法を支えるデータ変換ツール群「CrystalBridge(クリスタルブリッジ)」を独自に開発。ストレートコンバージョンの手堅さと、機能改修の柔軟さを両立させるとともに、移行にかかる時間も半減。SNP Japanの横山公一CTOは、「安定稼働まで1~2年かかるとされていた期間を、(最短で)6カ月に短縮が可能だ」と胸を張る。
SNPグループは、国内既存のビジネスパートナーとともにS/4HANAへの移行や、オンプレミス環境からクラウド環境への移植といったプロジェクトで実績を積んできた。この10月からは、富士通がSNPグループの商材を活用したS/4HANA移行支援のサービスを本格的に始めている。
富士通の北澤誠・第一ソリューション事業部第二ソリューション部部長は、「S/4HANA移行をきっかけにユーザー企業のビジネスのデジタル変革(DX)に弾みをつけたい」と、BLUEFIELDの手法によって既存システムからのコンバージョンを行うと同時に、DXに直結するビジネス変革の支援に力を入れる。DX領域は富士通が最も力を入れている分野の一つであり、この領域での付加価値を最大化することで、SAP関連ビジネスの一層の収益力の向上を目指す。
SAPの既存ERP製品のサポート期限を巡っては、当初の2025年から27年に延長した経緯がある。だが、「27年までに対応すればいいという考えでは、デジタル化の波に追いつけないと考えるユーザーが多い」(横山CTO)と、移行にかかる時間を短縮できるBLUEFIELDの手法に対する潜在的なニーズは大きいとみる。
SNP Japanでは、深い洞察力をもってユーザー企業の業務やビジネスを分析し、DXを支援する能力をもったビジネスパートナーを今後も増やしていく。BLUEFIELDはS/4HANAへの移行のみならず、例えばM&Aに伴うシステム分割や統合にも強みを発揮できることから、ビジネスパートナーとの中長期的な関係を保っていくことで国内での成長につなげる。