富士ゼロックスは、富士フイルムビジネスイノベーションに社名変更する来年4月1日付で国内の営業部門と全販売会社31社、富士ゼロックスインターフィールドを統合し、新会社「富士フイルムビジネスイノベーションジャパン」を設立する。顧客のビジネス環境が変化する中、多様化するニーズに迅速に対応できるようにすることが主な狙いだ。富士ゼロックスの旗生泰一・執行役員国内営業戦略・計画担当は「変わるというより、新しい会社を作るという意識でやっていきたい」としている。(齋藤秀平)
旗生泰一 執行役員
同社はこれまで、複合機や関連ソリューションなどを提供するオフィスプロダクト&プリンタ事業をビジネスの柱にしてきた。昨年度の売上高構成比では、全体の55.4%を占めており、旗生執行役員は「われわれが収益を上げてきたのは、紙にまつわる部分だ」と話す。
しかし、働き方改革やデジタルトランスフォーメーション(DX)の機運が高まったことで「紙の出力量が減ってきた」とし、「われわれのビジネスモデルからすると大きな影響があるので、市場のニーズに合わせてビジネスモデルを変えていかなければいけないと判断した」と新会社設立の背景を語る。
新会社の経営体制はまだ決まっていないが、ビジネスの方向性としては「進化するデジタル技術と長年培ったドキュメントに関する知見を生かし、DXを通じて顧客のコミュニケーション課題の解決の支援」や「高度なセキュリティや最適なテレワーク環境を実現する高付加価値なソリューションサービスをワンストップで提供」などを設定している。
顧客の中では、各都道府県内だけでビジネスを展開するのに加えて、都道府県外や海外に市場を求める動きもある。後者の場合、顧客をサポートするためには、これまでは各販売会社が連携する必要があったという。
旗生執行役員は、新会社でサポートを一本化することによって「よりタイムリーにフレキシブルな対応ができるようになる」と期待し、「全国の優れたノウハウや先進事例を吸い上げることで、同じような企業への提案がより一層しやすくなる」とも。社内的には、販売会社間の財務処理などの手続きを効率化し、生産性の向上につなげる方針だ。
また「当社の1番の強みは国内にあるインフラ。営業とエンジニアが全国津々浦々にいて、サービスを展開していることは、全国展開している企業にとっては大きな価値がある。これまでに築いた顧客との強固な関係性も財産だ」と強調し、「複合機は大事な資産なので、ビジネスの中心にはあるが、それだけではなく、複合機やソフトウェアを含めたソリューションを売ったり、サービスを売ったりしていくことにも力を入れていく」と話す。
一方、「社名が変わり、1社になることは、全国の販売会社で働いている人たちにとっては大きな転換点になる」とし、「みんなで新しい会社をつくるという意識でやっていく。顧客にとっても今回の1社化はメリットがあると考えているので、顧客から『1社になってよかった』と言ってもらえるようにしていきたい」と意気込む。
国内では、多くの企業が新型コロナウイルスの影響を受けており、経営の見直しを進めている。同社は「コロナ禍によって、今回の決断が顧客へのさらなる価値提供につながるため、やるべきと改めて認識した」と説明。新会社の設立は以前から検討しており、コロナ禍の影響は「今回の決断に直結していない」としている。