日本マイクロソフトは6月1日に開催した記者説明会で、中堅中小企業向けのクラウドビジネスを、今後5年間で10倍の規模に拡大させる目標を掲げた。同社の三上智子・執行役員コーポレートソリューション事業本部長は「Microsoft 365とTeamsを中堅中小企業のスタンダードのプラットフォームにしたい」とし、特に地方でのビジネスを強化する方針を説明。パートナーとは「今までにないくらいの密な連携を図っていく」と強調した。(齋藤秀平)
三上智子 執行役員
三上執行役員は「この1年間でクラウドの売り上げが22ポイント伸び、新規で弊社の製品を購入するお客様の7割以上がクラウドサービスを選んでいる」とし、「日本の中堅中小企業でも、クラウドがスタンダードになりつつある」と話した。中小企業での1日当たりのTeamsの利用者数が、2021年2月までの1年間で4倍に増え、グローバルの伸びを上回る勢いになっていることも示した。
しかし「クラウドの活用が十分かというと、まだ足りていない」と指摘。特に東京と地方の間の差が広がっているとし、同社の売り上げベースで20ポイントの開きがあることを示した。地方でのクラウドシフトが遅れている要因としては、社内人材やスキルの不足のほか、どこから手をつけたらいいか分からないといった声がパートナー経由で寄せられているという。
同社は、リモートワークを中堅中小企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩と位置づけており、パートナーとともにMicrosoft 365とTeamsの導入拡大に取り組んでいる。拡販戦略について、三上執行役員は「中堅中小企業のほぼ100%がOfficeを使っている。この強みを生かして(オンプレミス版の)Officeからクラウド化を広め、Microsoft 365とTeamsを使ってもらえるようにしている」と話した。
力を入れる地方を対象にした取り組みでは、キャンペーン施策の強化に加え、クラウドの導入や活用を支援するオファーなどを展開し、パートナーの売る力の強化とクラウドに対する理解の促進を図る考え。三上執行役員は「パートナーは各地方に支店があるが、中にはクラウドが売れていない支店もあるため、本部との連携だけでなく、支店レベルまで連携を拡大する」と述べた。さらに、今までにない動きとして「地方の中堅中小企業の経営層と密な関係のパートナーとの連携を固め、新しい顧客の開拓も進める」と語った。
中堅中小企業でのクラウドの活用を進める上で、同社はSaaSベンダーとの連携強化と、ISVが提供するパッケージのSaaS化も重要視している。三上執行役員は、クラウドサインとTeamsの連携ソリューション「クラウドサイン for Microsoft Teams」の提供がSBテクノロジーから開始されたことを示し、今後もSaaSベンダーを積極的にリクルートするとした。
ISVが提供するパッケージのSaaS化については、Microsoft Azure経由のSaaS化を支援すると説明した。すでに動き出しているパートナーもあり、ダイワボウ情報システムは、94拠点に491人のAzure認定資格取得者を配置するとともに、専任組織を立ち上げ、同社のISVパートナーに対してSaaS化に向けた支援をしている。
このほか三上執行役員は、スタートアップ企業を対象にした支援プログラム「THE CONNECT」について、現在132社の連携企業数を、5年後に500社まで増やすと表明した。また、マイクロソフトがハブとなり、スタートアップ企業と各産業の主要エンタープライズ企業とのコラボレーションを推進することも目指すとした。
三上執行役員は「日本の会社の99.9%を占め、全労働人口の6~7割を占める中堅中小企業がデジタル化を進めていくことは、日本を元気にしていくための重要な要素。しっかりと各企業に寄り添い、DXを実現していけるように少しでも支援していきたい」と話した。