SCSKは、自社開発のERP「ProActive(プロアクティブ)」の新シリーズとして、クラウドERP「ProActive C4」を11月1日から提供する。2005年に「ProActive E2」をリリースして以来、16年ぶりの刷新となる。市場では、各ITベンダーがERPのクラウド化を進めており、これまでにない競合関係も生まれているが、長年にわたって培った国産ERPとしての特徴に加え、プラットフォームとしての強みも訴求しながら導入の拡大を狙う。(齋藤秀平)
同社は1993年にProActiveの提供を開始。05年に「ProActive E2」、18年にProActive E2のSaaS版に当たる「ProActive for SaaS」を市場に投入し、これまでの28年間で6200社、280の企業グループに導入してきた。
刷新の検討を開始したのは数年前。同社ソリューション事業グループProActive事業本部ビジネス推進部の五月女雅一・部長は「単なるERPの新製品ではなく『さまざなサービスを提供するプラットフォームに』という視点を重要視した」と説明する。
五月女雅一 部長
人事給与と会計の業務に対応し、順次モジュールをリリースする予定で、他社のサービスとつなぐことによる価値の提供も図る。技術的な進化点では、「古き良きオフコンの流れをくんでいた」(五月女部長)というE2のアーキテクチャーを変更。さらに、フロント部分をCurlによるリッチクライアントからHTML5に切り替え、データベースの管理システムにオープンソースのMySQLを採用し、E2に比べて連携のしやすさを向上させた。
販路は、代理店経由と直販の両方があるが、現在の割合は直販がほとんどを占める。過去にはパートナーの拡充にも取り組んだが、E2を扱う上での技術的なハードルの高さがネックとなり、五月女部長は「代理店にはなかなか積極的に売ってもらうことができていなかった」と明かす。
代理店経由では、主に案件を紹介してもらい、同社が開発を担う形でビジネスを展開してきた。しかし、これにも社会情勢を背景とした課題がある。五月女部長は「1年間でこなせる案件の数は決まっている。日本の労働人口が減少に向かう中、現状の労働集約型のビジネスのままでは、自分たちで成長を止めてしまうことになる」と話す。
こうした状況を踏まえ、同社としては、C4ではチャネルを意識した販売戦略を展開し、E2からの切り替えも含め提供開始から3年で500社への導入を目指す。五月女部長は、クラウド上で提供するC4について「パートナーにとっては売りやすい商材になる」と期待し、自社製品を持つソリューションベンダーと協業して販路の開拓を進める構え。既存の代理店には、引き続き各企業のグループ内へ提案してもらう方針だ。
ProActiveシリーズは、国内の中堅企業をボリュームゾーンとしている。競合ベンダーに対しては、C4がクラウドネイティブであることを差異化要素の一つにする。最近では、各ITベンダーがERPのクラウド化を進めていることで、今までと顧客レンジが異なるベンダーと競合するケースも出ているが、五月女部長は「お客様の要望に合わせた導入が可能であるほか、ユーザーインターフェースにも力を入れている。こういったところで小回りがきくERPパッケージは、ほかにはないだろう」と自信を見せる。
海外ベンダーとの競合関係では、導入の品質や手厚い保守で違いを出していく考え。SCSKの別の事業部が、海外ベンダーの商材を活用したERPビジネスを展開している面もあるが、五月女部長は「けんかをするつもりは全くない」とし、「親会社は海外のERP製品でもいいが、グループ会社も含めて統一する必要はない。日本の制度や商慣習にしっかり適合し、お客様にとって最適な製品であることをアピールしながら提供を進める」と語る。