メタップスは、クラウドサービスへのログイン時に用いられる標準認証規格「SAML(サムル)」にSaaS対応するためのオープンソースソフトウェア(OSS)を開発し、7月にGitHubで公開することを計画している。コロナ禍で企業のSaaS活用が進む中、セキュリティの強化を実現したい考えだ。
同社は昨年12月、企業の社内IT担当者500人を対象にした「SaaSの利用実態調査」を実施した。それによると、新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年は、ビデオ会議ツールを中心に半数以上の企業でSaaSの利用が増加した。調査時点で利用しているSaaSの数は10個未満が全体の8割で最も多かった一方、中には100個近くのSaaSを利用している企業もあった。
同社によると、SAMLは、一つのIDとパスワードで複数のサービスにログインできる「シングルサインオン(SSO)」で活用されており、クラウドサービスの普及に伴って利用が進んでいるという。ただ、国内では、多くのSaaSがSAMLに未対応といわれている。
SaaSがSAMLに対応するためには、調査や設計、テスト、開発が必要で、SaaS事業者にとっては、時間やコストが負担になることが課題となっていた。そのため、同社はソフトウェアを自社開発することを決め、4月ごろから開発プロジェクトをスタートさせた。
古川和芳 マネジャー
同社の社長室新規事業グループの古川和芳・マネジャーは「SaaS事業者にSAMLをもっと実装してもらうために、どうしたらいいか考えた時、国内でIDaaS(ID管理)機能を備えたSaaS管理ツール『メタップスクラウド』を提供しているわれわれがソフトウェアを開発したほうがいいと判断した」と説明し、「テストなどは当社のメタップスクラウドとつなげればいいので、SaaS事業者にとっては工数やコストをかなり削減することができる」と語る。
同社が公開するOSSを活用することで、おおむね5営業日前後でSAMLを実装できるという。同社として具体的な目標は設定しておらず、古川マネジャーは「今回の取り組みは、ビジネス的な要素より、啓蒙的な意味合いのほうが強い。まずはマーケットをしっかり大きくして、SaaSがより使われる世の中にしたい」と話す。
古川マネジャーは今後、各業界に特化したSaaSの数が増えるとみている。OSSについては、市場全体に利用を呼びかけつつ、商圏がある程度限定的なSaaSを提供する事業者へのアプローチも進めるとしている。
同社のメタップスクラウドは現在、30以上のSaaSとSAMLによる連携を完了しており、今秋までの大型アップデートで、連携するSaaS数を100以上に増やすことを目指している。(齋藤秀平)