フロントエンド領域のソフト開発を手がけるチームスピリットは、専門知識を持つ高度人材を最適配置する「PSA(プロフェッショナル・サービス・オートメーション)」の販売を今年11月に始める。PSAはコンサルティング業務や建設業、システム構築(SI)などプロジェクト型ビジネスで人材の割り当てを自動化、効率化するもの。従来の工数管理や勤怠管理をプロジェクト型のビジネスにも応用できるように新規で開発した。チームスピリットの荻島浩司社長は「より高い専門性が求められるプロジェクト型へと産業構造が変わっている」とし、PSAを“戦略商材”と位置づけてビジネスパートナーとともに拡販に乗り出す。(安藤章司)
同社の主力製品は、勤怠管理、工数管理、経費精算などを統合した“働き方改革プラットフォーム”の「TeamSpirit」だ。強力な原価計算の機能がERPとシームレスに連動することが高く評価され、中堅・中小企業ユーザーを中心に2021年3月末で有償契約数は30万ライセンス超、連結売上高で30億円規模を射程内に入れるまで拡大してきた。並行して大規模ユーザー企業向けに開発してきた機能を今年3月に「TeamSpirit EX」としてリリース。PSAはTeamSpirit EXの拡張機能として販売する。
PSAは高い専門性が要求されるプロジェクト型のビジネスに焦点を当てた製品だ。誰がどのような技能を持ち、実績や適正がどの程度あるのかなどタレントマネジメントの要素を取り入れた。大規模ユーザーになればなるほど、従業員のキャリアやスキルの詳細をデータベース化して把握する重要性が高まり、協力会社など外部の専門家がプロジェクトに加わる割合も増える。「PSAによって社内外のタレントを正しく把握し、人的リソースを柔軟に割り当てられる」(荻島社長)
荻島浩司 社長
例えばSIerのビジネスでは、最終的な受注金額が確定しないまま準委任契約のようなかたちで開発を継続する大規模アジャイル開発と相性がいい。継続的な開発を行うといっても、ほかのプロジェクトとの兼ね合いや人材育成の面からメンバーを入れ替える場面はあり、そのための「最適解を効率よく導き出すのにPSAは役に立つ」と荻島社長は話す。
産業構造の変化によって、高い専門性が求められる上流工程に多くの人材が割り当てられるようになるとともに、SIerの大規模アジャイル開発のように明確な納品の完了がなく、継続的に人的リソースを必要とするような受注方式が増えるとチームスピリットは見ている。SI業界以外にも、コンサルティングや建設業、広告代理店などプロジェクト型のビジネス全般に応用が可能だ。荻島社長は、「産業構造そのものが上流工程への比重を高め、より付加価値の高い領域にビジネスを広げる動きが活発化している」と、PSAの需要増に手応えを感じている。
PSAを含むTeamSpirit EXはSaaS方式で提供するものの、大規模ユーザーが主な対象であることから、実際にはERPとのつなぎ込みなどの個別SIが発生するケースが多く、SIer経由での販売に重点を置く。既に伊藤忠テクノソリューションズや野村総合研究所をはじめ10社ほどのSIerが取り扱いを始めており、「ビジネスパートナーとともに、多くのユーザー企業に提供できる体制を整える」と販売網の拡充に力を入れる。こうした取り組みによって、TeamSpiritシリーズ全体で100万ライセンスの有償契約、年商100億円の早期達成を目指す。