キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は、SaaS対応のAI OCRソフト「CaptureBrain」と、サイボウズ「kintone」との連携を10月中旬に始める。今回の連携によって、紙文書をAI OCRで読み取ったデジタルデータを、kintoneで開発した業務アプリへスムーズに取り込むことが可能になる。CaptureBrainは昨年10月にSaaS化したが、「利用者を一段と増やすには、より規模の大きいkintoneのビジネス生態系に入るのが近道」(デジタルビジネス企画部企画第一課の山野雄也氏)と判断した。
山野雄也氏
CaptureBrainは、キヤノンITSが独自に開発した金額表記、電話番号などの読み取りを強みとするAI OCRエンジンやCogent Labs(コージェントラボ)製の汎用性に優れた手書き文字認識エンジン「Tegaki」などを組み合わせて認識率を高めた。
鳥巣有希恵氏
もともと保険会社の申し込み書類など大量の手書き文書を効率よくデジタル化するためのSIコア・パッケージソフトとして開発してきたが、業務のデジタル化の波が中堅・中小企業にも拡大してきたことを受けてSaaS方式で、「より幅広いユーザー層に使ってもらえる」(デジタルビジネス企画部企画第一課の鳥巣有希恵氏)ようにした。初期費用を除いた価格も、処理枚数300枚程度で月額3万円からと利用しやすくしている。
だが、SaaS化後の1年間を振り返ってみると、既存の業務システムとの連携にCSVファイルを介するなど手間がかかること、またSaaS製品単独で売り出してもリーチできる範囲が限られ、SaaSのアプリマーケットのような場所で露出しなければまとまったボリュームでのサブスクリプション獲得は難しい側面が明らかになった。
そこで、中堅・中小企業に広く使われているkintoneとまずは連携し、kintoneのビジネスエコシステムに入り込むことで、一層多くのユーザーの目に触れる機会を増やすとともに、販売を担うビジネスパートナーの増強につなげることにした。山野氏は、「向こう1年で従来の倍のサブスクリプションを獲得したい」と、ユーザー数の増加を目指していきたいとしている。(安藤章司)