バックアップソリューションなどを提供するアクロニスのグローバルCEOにパトリック・プルヴァミュラー氏が7月に就任した。就任して間もないがグローバルで採用強化を図るなど、早速、その手腕を発揮している。組織の成長が一番重要な仕事だと語るプルヴァミュラーCEOに、就任の経緯や今後のビジネス展望を聞いた。
(取材/日高 彰 文/岩田晃久)
機能統合の優位性を周知させる
アクロニスのCEOに就任したきっかけを教えてください。
プルヴァミュラー 前職はゴーダディ(GoDaddy)というドメイン登録やWebホスティングの会社で、パートナーセールス部門のリーダーを務めていました。担当分野の一つがセキュリティで、当時アクロニス製品を取り扱っており、また、社内利用もしていたため、機能が優れていることは理解していました。
パトリック・プルヴァミュラー CEO
そのゴーダディ時代に、アクロニスの企業情報を深堀りして調べる機会があり、三つの魅力を発見しました。一つめは優れた経営陣と高い技術力を持つスタッフで結成されるチーム、二つめは最新テクノロジーを活用して製品を開発していること。そして、三つめは今後、大きく成長する可能性を秘める市場に参入していることです。
入社して日は浅いですが、素晴らしい点をいくつも発見しており、期待以上の会社だと感じています。
製品の特徴や他社製品との差別化ポイントはどこになりますか。
プルヴァミュラー アクロニクス製品の優位性は、バックアップの他にもセキュリティをはじめとした多くの機能が一つのエージェントソフトにより完全に統合化されていることです。そのため、インストール時間の短縮、コスト削減を実現します。また、リセラーやサービスプロバイダーとって、アクロニス製品は簡単に学ぶことができます。そして、一度、学べばさまざまなユースケースにそのノウハウを流用できます。
顧客層について教えてください。
プルヴァミュラー SMB(中堅中小企業)が70%を占めており、エンタープライズ(大企業)が20%、10%がコンシューマーになります。SMBは注力してきたセグメントであり、今後もそれは変わりません。ただ、エンタープライズもコンシューマーも当社にとっては重要な顧客です。そのため、どのセグメントに対しても投資を続けていきます。
3年後の売上比率も大きく変わることはないはずです。ただ、パートナービジネスでは、エンタープライズの案件が増加傾向にあるため、将来的にはエンタープライズの比率が少し増えるかもしれません。
数年前から「SAPAS(同社が掲げる5方向のベクトル。Safety、Accessibility、Privacy、Authenticity、Securityの略語)」を推進していますが、方針に変化はありますか。
プルヴァミュラー CEOに着任した際に、すべての従業員に対して「これまでのアクロニクスのすばらしいビジョンとミッションは変わらず継続する」とメッセージを発信しました。つまり、SAPASの方針は今後も継続するということです。
私がCEOとして注力していくことは、組織の成長支援です。その一つとして現在は、人材採用を強化しています。2020年12月の時点でグローバルの従業員数は1400人でしたが、現在は、1700人超と大きく拡大しました。増員した300人は研究開発やクラウドインフラを強化するための人員が大半です。また、グローバルで販売体制を強化するために、各国でマーケティングセールス担当者の採用も行いました。
加えて、既存の社員のモチベーションを高めつつ学ぶ機会を作り、成長を支援することも私の重要な役割です。新型コロナ禍によりリモートワークが拡大しているため、特に重要だと感じています。
私はゴーダディ時代にグローバルの数千人もの従業員をマネジメントした経験があります。その経験をアクロニクスで生かし、社員の働き方の効率性と効果を高めていきたいです。
日本の特徴を把握して戦略を進める
日本市場をどのようにとらえていますか。
プルヴァミュラー 日本は経済大国であり、テクノロジーが発達しています。一方で、多くのデータが各企業ごとのデータセンターにあるというのが特徴だと思っています。そのため、オンプレミス製品やデータセンター向けの製品を提供するための投資を行います。日本の特徴を理解したチーム作りにも着手する必要があると言えるでしょう。
ただ、私自身はクラウド派のため、アクロニクス製品をどこにいてもクラウドで利用できることも日本でアピールしていきたいです。
多くのサービスプロバイダーがパートナーとなっていますが、彼らの抱える課題を教えてください。
プルヴァミュラー 各国で規制の環境が常に変化しており、その影響でエンドユーザーからプライバシーに関しての需要が急増し、その対応に苦労しているケースが多くなっています。当社では各国に従業員がいるため、規制の変化をはじめ各国の情報をいち早く収集できる体制にあります。規制に対してその都度アップデートして対応しているため、パートナー企業は不安を持たずユーザーに提案してもらいたいです。
スポーツ関係団体との協業・スポンサーシップや、「アクロニスサイバー財団」による学校建設などの活動は今後どうなりますか。
プルヴァミュラー 今後も継続して取り組みます。スポーツ分野については、大量に得られるデータをAIやマシンラーニングのアルゴリズム開発に活用していきます。また、サービスプロバイダーと協力してスポーツ大会やイベントに支援を行い、存在感を高めていきたいです。
教育については、私自身、全世界の誰もが知識にアクセスでき、すべての人々が創造して学べる環境があるべきだと考えています。そのため、寄付者をはじめ多くの人と協力し、学校建設の活動を今以上に推進していく予定です。
今後の展望を教えてください。
プルヴァミュラー アクロニスは「バックアップ」のイメージが強いですが、ビジネスをより加速させるためには、複数の機能を統合して提供していることを多くの人に認知してもらうことが重要です。そのために、組織の強化など取り組みを加速させていきます。