ロードバランサーやWAFを提供する日本ラドウェアは、クラウド版製品の販売を強化するため、同製品の販売を担うパートナー網の拡大に動き始めた。Webアプリケーションをターゲットにしたサイバー攻撃の増加により、これまでビジネスの中心としていたアプライアンス製品に加えてクラウド版の需要が高まっていることから、販路の幅を広げることで国内ビジネスの成長をねらう。
ラドウェアはイスラエルに本社を置くロードバランサーのベンダーで、負荷分散やWAN最適化などの機能を持つ「Alteon」シリーズや、Webアプリケーションを保護するセキュリティ製品を主力としている。多くの製品でアプライアンス版とクラウド版を用意しており、オンプレミスからプライベートクラウド、パブリッククラウドまで同じ技術を用いて性能向上やセキュリティ強化を図れるのが特徴。
近年はDDoS攻撃の件数が増加しており、Webアプリケーションに脆弱性がなくてもサービスが停止に追い込まれる恐れが高まっていることから、DDoS対策機能に対する引き合いが増えている。新型コロナ禍で多くの企業がオンライン取引の拡大やクラウドの導入に動いているため、同社がこれまで強みとしてきたサービス事業者や金融・公共系の顧客だけでなく、一般企業からもWebアプリケーション向けのセキュリティ製品が求められるようになっているという。
小林岳夫 社長
日本ラドウェアでは今年4月、ブルーコートシステムズやセキュアワークスなどで要職を務めた小林岳夫氏が新たな社長兼営業統括本部長に就任し、営業体制を再構築した。今後は、日本市場で手薄だったマーケティング活動にも力を入れる考え。
小林社長は「万が一サイバー攻撃を受けた際、ユーザー企業のデータセンターや拠点に到達する前に攻撃をブロックしたいというニーズが高まっている。また、クラウド版の製品は短期間で展開することができるほか、運用負荷が小さく、機器が故障する心配もない」と述べ、クラウド版を選択するユーザー企業および販売パートナーが増えていると説明した。
クラウド版のセキュリティ製品としては、DDoS対策、WAF、ボット対策に加えて、パブリッククラウドの設定・権限の不備などによる情報漏洩を防止する「クラウドネイティブプロテクター」を用意している。同社はシスコシステムズを最大のパートナーとしているが、クラウド版の製品群に関してはシスコや既存パートナー経由の販売に加え、クラウドインテグレーターを通じた提供も拡大していく方針。既に国内でも、AWSを基盤としたシステム構築を得意とするインテグレーターとのパートナー契約が進んでいるという。
パートナー側では既に競合他社のクラウドセキュリティ製品を取り扱っているケースも多いが、小林社長は、ラドウェア製品はコンプライアンス/ガバナンス系の機能が充実しているほか、レポーティング機能についても分かりやすさ、使いやすさが評価されていると強調。クラウド保護の需要は高まっており、同社が市場に入り込む余地は大きいとの見方を示した。(日高 彰)