日本IBMは、社内の開発部門がパートナーの技術者とソリューション開発を進める「パートナー・ソリューション共創ラボ」を設立し、内外連携の体制整備に動き出している。今年1月の設立から段階的に増員しており、将来的に100人体制を目指す。朝海孝・常務執行役員テクノロジー事業本部副本部長兼パートナー・アライアンス事業本部長は「連携の形態が深化した『新時代のモノづくりジャパン』になる」 と述べ、成長を期待する事業に位置付けて取り組みを進める考えだ。
(山越 晃)
朝海 孝 常務
設立の背景について、朝海常務は「技術者にとってIT業界で働く以上はテクノロジーに深く携わっていきたい気持ちがある。そういった技術者たちに活躍の場をもっと提供していきたい。研究開発に近い形で、かつ現場にいることは技術者としては非常に有意義と考えている」と話した。
ラボでは、社内の人材が外部のパートナーと一体化してソリューションを開発していくほか、幅広い分野や環境で実際に顧客と接する機会を増やし、新たに創出したものを共有し合うことで技術者の士気向上につなげる。異なる知見や豊富な実績をもつ外部人材と新しい時代のモノづくりを目指すことを強化事項に挙げている。
パートナー戦略を拡充していくうえでの見通しとして、「昨年はサードパーティーのソフトウェア会社なども多くIBM Cloudのパートナーになっていただいた。そういった取り組みは今年も続けていきたい」と述べた。昨年の顧客はLinuxが中心だったが、今後はWindowsのソフトウェアなどとの連携を模索している。当面、Windowsのアプリケーションをコンテナ化していくことを、ラボの取り組みの一つとして注力していく。
一方でIBMが進んでいく方向性について朝海常務は「しばらくはサービスカンパニーとして成長を目指していたが、これからはテクノロジーカンパニーへの原点回帰が必要になる」と強調。同社の組織では従来「お客様担当営業」を設けて顧客の課題に対応しながら、上流のコンサルティングからアプリケーションや基盤の開発、ハードウェア、ソフトウェア、保守をトータルソリューションとして届けるビジネスモデルを展開してきた。
同社によれば、北米で出されている特許でIBMは29年連続のトップで、昨年の統計ではグーグル、アマゾン、マイクロソフト、アップルの4社合計数より多いという。一方で各社の成長を比較して、特許の多さを顧客価値向上へ十分につなげられていないことから、IBMの経営ビジョンに変化を加えていく方針が掲げられた。
朝海常務は「テクノロジーカンパニー」になるための改革が拡充していることにも言及。IBMは過去数年の間にレッドハットを買収したことや、基盤サービスをキンドリルへ分離するなどして大きくかじを切っている。
また「お客様担当部署」を専門性に特化した組織に改めた。「スペシャリティを持つ人材だけの組織に変わっている。テクノロジーの幅が広く深くなっていることから、お客様の社内ではデジタルな取り組みをしていくスタイルへと変化している。お客様の業務や課題に対する知識や洞察、そしてプロダクトの専門性をもっと前面に押して出していきたい」との方向性を示した。