アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、パートナープログラム「AWS パートナーネットワーク(APN)」で新たな施策を推進している。柱になるのは、製品やサービスに焦点を当ててパートナーを分類する「パートナーパス」だ。渡邉宗行・執行役員パートナーアライアンス統括本部統括本部長は、企業体で分類する従来の枠組みをパートナーパスに置き換えるとし、刷新の背景には「顧客起点」の考え方があると説明する。
(齋藤秀平)
渡邉宗行 執行役員
パートナーパスは、昨年のグローバルイベント「re:Invent」で発表され、国内では今年1月に本格的に開始した。製品やサービスを「オファリング」とし、ソフトウェアとハードウェア、サービス、トレーニング、ディストリビューションの計五つのオファリングについて「パス」を用意。パートナーには、提供できるオファリングに合わせて参加するパスを選んでもらう内容になっている。
渡邉執行役員は、3月16、17の両日開催したパートナー向けイベント「AWS Partner Summit Japan 2022」で、国内でのパートナーパスの展開について紹介。名称の「パス」については「回すパスではなく、道や経路という意味の言葉」とし、「パートナーパスは、お客様のクラウドジャーニーをご支援する道筋だと理解してほしい」と呼びかけた。
APNではこれまで、「テクノロジー」と「コンサルティング」の2種類でパートナーを大きく分類していた。だが、コロナ禍の急激な変化に対応するため、企業の間でクラウドビジネスが広がる中、これまでの分類方法はパートナーと顧客の双方にとってクラウド化の動きを阻害する要因になっていたという。
週刊BCNの取材に応じた渡邉執行役員は「今まではSIerなどの企業体によってテクノロジーとコンサルティングのどちらに入るか決めてもらっていたが、パートナーにとっては実力値をお客様に伝えきれず、逆にお客様からはパートナーの力が分かりにくい状況になっていた」と明かす。
オファリングごとのパスに参加することで、パートナーにとってはどのようなメリットがあるのか。渡邉執行役員は、大手SIerのケースを具体例として示し、「コンサルティングやアプリケーション開発に取り組んでいるイメージが強いが、実際はパッケージソリューションのSaaS化をどんどん進めている。これまでの枠組みでは、彼らが持っているSaaSがAWSに適合していることをお客様にアピールできなかったが、それを可能にすることがパートナーパスの狙いだ」と強調する。
パートナーパスでは、複数のパスに参加することもできるが、渡邉執行役員は「すぐに参加を受け入れるわけではない」とし、パスの中で一定の要件を設けると解説する。
例えばサービスパスとトレーニングパスでは、専門性や実績などによるこれまでの「ティア」と呼ばれる階層構造を引き続き設定。ソフトウェアパスでは、セキュリティや信頼性、運用上の優秀性を審査する「ファンデーショナルテクニカルレビュー(FTR)」を通過したパートナーに認証バッジを付与してクオリティを担保するとしている。
国内の法人向けIT市場では、ビジネスを拡大する上でパートナーの存在は欠かせない。各ITベンダーがパートナープログラムを提供する中、製品やサービスごとにパートナーを分類する試みは珍しいといい、渡邉執行役員は「業界の中では非常に新しいチャレンジになる」と意気込んでいる。