バッファローが法人向けビジネスに注力している。コロナ禍で企業のデジタル化が進む中、成長が見込めると判断したからだ。今年4月には組織体制を大幅に刷新し、販売パートナーの支援体制を拡充。主力のネットワーク事業では新製品と新サービスの提供を予定している。充実したサポートと製品・サービス力で市場での認知度を向上させる方針で、法人ビジネスを統括する横井一紀・常務取締役は「販売パートナーの中での立ち位置を一段ずつ上げていく」と意気込んでいる。
横井一紀 常務
「家庭用の市場では一定の認知をしていただいているが、法人市場ではまだまだ認知度が低い」。横井常務は6月2日の発表会で、5年ほど前から力を入れている法人向けビジネスについて、現在の市場での評価をこう分析した。
同社の法人向けビジネスは「以前はディストリビューターに販売をお願いするようなかたちで動いていた」(横井常務取締役)という。パートナーとの関係が十分に構築できているとはいえず、パートナーやエンドユーザーからの声を拾いにくいことが課題になっていた。
こうした状況を受け、販売体制やサポート体制の強化を目的に、4月に組織を改編した。法人ビジネス本部を設置し、全国に拠点があるパートナーを担当する広域営業部と、エリアごとにパートナーを担当する東日本と西日本の各コーポレート営業部、全国のパートナーの技術支援を担う営業技術部を傘下に置いた。これまでに神戸市や新潟市などに新拠点も開設した。
組織改編についてのパートナーの受け止めは上々だ。横井常務は「各パートナーに営業担当が付いたことは非常に喜ばれている」と紹介。さらに「フィールドエンジニアによる技術面でのサポートは、パートナーに一番評価されている」とし、多くのパートナーが悩んでいる人手不足を支えるため、今後はエンジニアの配置に力を入れていくとした。
同社は、法人向けビジネスの具体的な数字は明らかにしていないが、売上高は右肩上がりを続けていると説明している。ここ数年は、コロナ禍でデジタル化の動きもあり、これまでIT化が進んでいなかった医療や介護・福祉といった業界からの問い合わせが増えていることから、幅広いニーズの取り込みを狙う。特にテレワークの導入や事業継続計画(BCP)の策定に遅れがあり、それらの原因となっているIT人材の不足も目立つ中小企業を主なターゲットにビジネスを展開する。
発表会で同社は、企業でのWi-Fi6の本格普及を見据え、DFS(Dynamic Frequency Selection)障害回避機能を搭載した中規模ユーザー向けのWi-Fi6対応アクセスポイント「WAPM-AX4R」を今夏から出荷すると発表。Wi-Fi6E対応モデル「WAPM-AXETR」を今年末に提供する計画も披露した。このほか、インターネット経由でネットワーク機器の自動設定が完了できる「キキNaviクラウドゼロタッチ」を今冬から提供する予定とした。
(齋藤秀平)