テクノロジーがもたらす変化は新型コロナウイルス感染症パンデミックによって10年分前倒しされたといわれている。そんな環境下、多くの大手企業は新規事業開発への活動量をコロナ禍以前よりも維持・向上させている。この連載では、その実態を生の声とともに紹介する。
日本企業においては大企業を中心に、長きにわたって変革の必要性が声高に叫ばれている。世の中が前例のないスピードで変化する中、これまで積み上げてきたルールや前提が崩れ始めたことが背景にある。
例えば、AIなどのテクノロジーの進化は加速度的に進んでいる。AIや5G、ブロックチェーンなどの強力なテクノロジーが組み合わさることで、さまざまな業界に破壊的な変化が起こり始めている。
また、今回のパンデミックは、これらの変化を10年分前倒ししたともいわれている。既存の産業のデジタル化にとどまらず、働き方など、個人の思考まで大きく変化したのだ。
もう少し視野を広げると、大きなリスクも顕在化している。環境破壊を起因とする気候変動は、今後避けて通れない問題。政府、企業、人々の意識と行動の変化が求められている。
加速した変化は、既存の業界構造を大きく変えている。例えば自動車業界をみると、自動化・EV化などの変化により、一気に業界の境界線が溶け、さまざまなプレーヤーの参入が相次いでいる。グーグルやアップルなどの情報通信業、ソニーなどの電機メーカーなどが自動車業界に参入。これらの参入によって、車自体が提供する価値も大きく変化しようとしている。
また、現実と仮想の境界も曖昧になってきている。BMWは、NVIDIAとの協働でリアルな自動車工場を仮想空間に再現し、遠隔にいる技術者がアバターとして中に入り、設備切り替えなどの作業をシミュレーションすることで、生産効率を大幅に向上させている。
大きな変化が起きる時、そこには新たな機会が生まれる。その機会をつかむため、イノベーションに積極的な投資を行い、変革に挑戦する企業や人が増えているのだ。実際、世界的にイノベーションへの投資は加速している。世界のR&D投資は、2019年で1.45兆ドルにのぼる。DXの領域における投資も加速。MarketsandMarketsの調査では、世界のDX市場が20年の4698億ドルから今後5年間、年率16.5%で成長を続け、25年に1兆ドルを超えると予測している。
世界的にイノベーションへの投資が加速
(出典:ビザスク)
また、日本においても新たな事業へのチャレンジを多くの企業が実施している。特に大手企業では、コロナ禍でも約7割が新規事業への活動量を維持している。
新規事業調査レポート「大企業の新規事業担当者100名に聞いたコロナ禍の新規事業の実態」
(出典:ビザスク)
一方、新規事業を推進するに当たって、新規事業を担う人材の不足、経営層の新規事業への理解不足、ノウハウの不足などの課題も明らかになっている。
新規事業調査レポート「大企業の新規事業担当者100名に聞いたコロナ禍の新規事業の実態」
(出典:ビザスク)
社内に新規事業の人材・ノウハウが不足する中、「決められない」「決めさせられない」状態が数多く発生し、新規事業の芽が摘まれてしまっている実態も明らかになっている。事業を変革する前提として、企業内における意思決定プロセスをどのように変革していくのか、ということが求められているというわけだ。
■執筆者プロフィール

宮崎 雄(ミヤザキ ユウ)
ビザスク 執行役員
横浜国立大学卒業。2006年にリクルートHRマーケティングに入社し、営業、新商品開発、リクルートホールディングス・リクルートジョブズの経営企画部門の責任者として従事。19年3月、ビザスクに参画、CEO室長とビザスクlite事業部長を兼任し法人向けマーケティングの立ち上げとビザスクliteの成長を推進。22年3月、法人事業部 事業部長。
2006年にリクルートHRマーケティングに入社し、営業、新商品開発、リクルートホールディングス・リクルートジョブズの経営企画部門の責任者として従事。2019年3月にビザスクに参画、CEO室長とビザスクlite事業部長を兼任し法人向けマーケティングの立ち上げとビザスクliteの成長を推進。2022年3月より法人事業部 事業部長。横浜国立大学卒業。