2019年4月に施行された働き方改革関連法案を経て、日本でも少しずつではあるが副業・兼業の解禁が推奨され始め、20年の新型コロナウィルス流行の影響により、個人の働き方や考え方は大きく変化している。一方、地方では中小企業によるDX化や自治体による地域活性化に向けた取り組みなどで、多くの課題がある。そこで、この連載では時代の流れをつかむための働き方や人材活用などについて解説していく。今回は副業解禁やコロナ禍での働き方や人材活用の解決策を紹介する。
厚生労働省は18年1月に副業・兼業について、企業や働く方が現行の法令のもとで、どのような事項に留意すべきかをまとめたガイドライン(副業・兼業の促進に関するガイドライン)を作成した。さらに、企業も働く方も安心して副業・兼業を行うことができるようルールを明確化するため、20年9月にガイドラインを改定している。
企業側の動きとしても、もともと副業制度導入をしていたIT・Webサービス企業だけでなく、大手メーカーや金融機関なども副業・兼業を解禁する流れがあった。しかし、副業・兼業を解禁した企業で実際にその制度を活用している社員は少ない。副業や兼業をしていたとしても、親族自営業の手伝いや自身の趣味を生かしたサイドワークなどが多く、本業で培った経験を生かした副業・兼業はごく一部の限られた社員という傾向が高いようだ。
なぜ、そのような状況になっているのか。理由はいくつか考えられるが、一つに、正しく自身の「経験の棚卸し」ができていないことが挙げられる。経験の棚卸しと聞くと、「上司や人事との定期的な面談で実施している」というケースもあるといえるが、ここでの「棚卸し」というのは、「自社以外の環境と自身の経験・強みのフィッティング作業」のことを指す。市場では、現在どのような経験が重宝されているのかを正しく知り、そのニーズと照らし合わせて自身の経験・強みがどうフィットするかを把握する必要があるのだ。
20年に知見を提供する働き方を実践するモチベーションを調査したところ、副業・兼業の実践者は短期的な収入への関心に限らず、働く力やスキル向上への意識が高まっているということが分かった。
コロナ禍における時間の使い方・働き方への意識調査
二つめは、企業側が「副業・兼業スタッフの業務イメージを持っていない」ということが挙げられる。副業・兼業を解禁した企業は多くあるが、それらの企業にこれまで自社で副業・兼業人材を使ったことがあるか、という質問をすると、おそらく大半の企業が「ほとんど使ったことがない」という回答になる。最近では「ジョブ型雇用」というキーワードも幾分認知されてきたが、未だ多くの企業はジョブ型雇用ではなく、「ジョブとして業務を切り分ける」ことに慣れていない企業が多い。
そのため、基本的には自社社員が行うか、ベンダーに発注するか、定形業務をBPOベンダーに依頼するか、などの選択肢が中心で、プロジェクトメンバーとして副業・兼業社員を活用する、といった選択肢を持っていないことがほとんど。自社で副業・兼業の社員を過去に活用したことがあれば、どういった動きが求められているのか、どういった課題があるのかが分かり、自身が副業しようとした際の参考になり、うまく立ち回ることができるはずだ。
企業経営がこれまで以上にさまざまな打ち手が必要となる中で、自社の知見・リソースだけではビジネスの継続・成長はますます難しい時代になっている。ただ、コロナ禍においてオンラインでのコミュニケーションが一般化し、時間と場所を超えて業務を遂行できるようになった環境は、自社で副業・兼業のスタッフを採用する上でも、自社社員の副業・兼業を促進する上でも、後押ししているといえるだろう。
■執筆者プロフィール

草野琢也(クサノ タクヤ)
ビザスク partner事業部事業部長
日立ソリューションズでシステム構築、プリセールスに従事した後、パソナに転職。人材紹介事業で法人営業、キャリアアドバイザー、マーケティング業務を経験。2013年、新規事業開発に携わり「顧問紹介サービス」を立ち上げ、19年10月にパソナ顧問ネットワークとして分社。執行役員として営業、マーケティング、広報などを担当。20年8月、ビザスクに入社。実働型の伴走支援サービス「ビザスクpartner」、社外役員マッチングサービス「ビザスクboard」を立ち上げる。