コロナ禍で集客に苦戦をした時期を経て、飲食店への人の流れも徐々に戻りつつあるが、集客の手法やトレンドの移り変わりは早く、臨機応変に対応していくことが求められる。今回は店舗集客の“今”を整理しつつ、“これから”についての推測を提示する。その中にDX化アプローチのヒントがある。
店舗集客の3原則とは
最初に店舗集客に求められる3原則を提示する。「グルメ媒体の成果最大化」「マーケティング施策による集客最大化」「オウンドメディアのコミュニケーション最適化」だ。これはコロナ前と大きく変わっていない。
グルメ媒体の成果最大化は、集客の中で太い経路であるグルメ媒体でいかに露出して予約を獲得するか。最適なプラン選択とコンテンツの作り込みが肝となる。マーケティング施策による集客最大化は、自然検索やMEOなどのSEM(検索エンジンマーケティング)、広告、SNS(LINEを含む)など、さまざまな施策を駆使して、ターゲットとのタッチポイントで精度の高いアプローチを展開する。オウンドメディアのコミュニケーション最適化は、オウンドメディアで満たすべき役割を明確にし、それを実現するためのサイト設計と編集と突き詰める。
グルメ媒体はユーザー行動の詳細な分析に基づくUI/UXや機能が、ユーザビリティとユーザーエクスペリエンスを極限まで高めて予約まで着実に導いていく。「ポイントを貯めたい」「貯まったポイントを利用したい」「口コミを見てから店を決めたい」など、媒体ならではの付加価値もあり、店舗集客を成功させるため、グルメ媒体は欠かせない。それを踏まえ、オウンドメディアでは足りないものを補填し、その他マーケティング施策を駆使して集客を最大化していくのがセオリーである。
高度化したお店選びの“今”
10代、20代の情報収集は想像以上に進化している。インスタで見た写真をきっかけに店舗の公式アカウントをチェックし、一般ユーザーの投稿を口コミ代わりに一通り閲覧してから行く行かないをジャッジし、グルメ媒体で詳細な店舗情報を確認して訪問みたいなことを当たり前のようにやっている。
圧倒的な普及率を誇るLINEは、年配の方も含めて生活には欠かせないインフラとなっている。通知をマメにチェックしながら、LINEで各種グループとコミュニケーションをして、お気に入りの公式アカウントで情報収集や予約をする。一方ビジネスパーソンや年配者の利用が目立つFacebookでは、実名制を前提とするSNSということもあり投稿に対するコミュニケーションも比較的円滑で、店舗集客での成功事例も多い。
メディアリテラシーの向上や情報収集の多様化が進み、薄いアプローチではターゲットには響かない。さまざまなタッチポイントでのパーソナライズした対策が求められる。
求められるのは編集/ライティング/デザインなどのクリエイティブ
店舗集客の手法や技術は進化し、あらゆる接点でのアプローチが可能にはなった。位置情報や画像、各種属性データや購入履歴、位置情報、画像など、さまざまな条件でのセグメントも可能となり、特定のユーザーに対して最適なタイミングでメッセージを発信できる。しかし、いかに精度の高い発信をしても目にするアウトプットが“響くもの”でないと成果にはいたらない。
成否を分けるのは、ターゲットと接点を考慮した上で何をどのように訴求するのか編集し、直感的に伝えるためのコピーとデザインをつくりあげること、つまりはクリエイティブである。広告では従来各媒体の特性を踏まえたクリエイティブを当たり前のようにやってきたが、店舗集客においてはさらに細分化した編集が求められる。
「編集」をいかにDX化するか
外食業界でも新しいソリューションやサービスが増えているが、業務負荷軽減という名目で「更新」を自動化するにとどまるものが多い。店舗情報などのスタティックなものは「更新」でも十分である。しかし、集客や売上拡大につなげるためには「編集」が必要となる。経験・ノウハウを持った人財が手掛ける「編集」、そのDX化が求められているのではないだろうか。
■執筆者プロフィール

左川裕規(サガワ ヒロキ)
イデア・レコード 取締役
早稲田大学卒業後、広告会社へ入社。マーケティングプランナーとして従事。家電メーカーや大手通信会社、商業施設などのプロモーション戦略や、Webサイト構築を担当。その後、NRIネットコム(現)に入社。WebテクノロジーとUXの設計構築コンサルタントとして、大手証券会社のWeb戦略、国内流通産業大手のインターネットマーケティング戦略、 ネット損保のWebプロモーション戦略に参画。2016年、イデア・レコードに入社。