実店舗のデジタル化やオンライン・オフラインを活用したオムニチャネル化が新たなスタンダードとなりつつあり、中小事業者でも実店舗とネットショップ(ECサイト)の両立が急務といえる。経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2021年7月30日発表)によると、「EC化率」が、BtoC-ECで8.08%(前年比1.32ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が進展している。EC化率は、全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する電子商取引市場規模の割合を指す。
特に物販系分野のBtoC-EC市場規模の内訳をみると、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」「食品、飲料、酒類」、「生活雑貨、家具、インテリア」の割合が大きく、これらの上位4カテゴリー合計で物販系分野の73%を占めている。EC化率については、「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(26.03%)が高い値となっている。
ここで中小事業者において必ず発生する課題が、「実店舗とネットショップ、それぞれの商品・在庫・売上データを管理する煩雑さ」だ。heyでは、中小事業者がこれら登録作業・売上管理・在庫調整の複雑な作業から解放され、商売に集中できるよう、実店舗とネットショップの在庫を一つにまとめて管理できるiPad用レジアプリ「STORES レジ」を2021年6月から提供している。レシートプリンタやバーコードリーダーなど、さまざまな周辺機器との接続も可能だ。
STORES レジは、アパレルや生活雑貨、食品などの「小売業」が全体の6割を占めつつ、美容室や飲食店といった「サービス業」も導入。ネットショップサービス「STORES」とSTORES レジとを併用している事業者の76.4%が「在庫連携機能」を利用し、在庫管理の課題を解決している(22年6月現在)。
STORES レジは、アパレルや生活雑貨、食品などの「小売業」が全体の6割を占めつつ、
美容室や飲食店といった「サービス業」も導入(2022年6月現在)
ネットショップサービスの「STORES」とSTORES レジとを併用している事業者の
76.4%が「在庫連携機能」を利用(2022年6月現在)
実際にSTORESとSTORES レジを導入した中小事業者から、「扱っている商品店数が多く、レジとネットショップそれぞれで商品登録を行うと二度手間になり、作業時間がかさんでいた。在庫状況を一元管理できることで、どちらかだけを確認すれば良くなった」「イベント販売やポップアップストアでは、値札を商品からはがして在庫と売り上げを管理していたが、レジ会計だけで完結できるようになり、効率が良くなった」「店頭で商品が売れると、その都度ネットショップから手動で在庫を減らしていたが、そういった作業がなくなった」という声があがっている。
また、ネットショップと実店舗向けのレジサービスなどを連携させる場合は、業務システムによくある「使いにくいが、使わざるをえない」という状態を解決し、従業員の教育コスト・学習コスト軽減を考慮する必要がある。STORESのサービスは、使いやすさをはじめUX(ユーザー体験)を統一的に展開しており、例えば実店舗でレジに関して主にアルバイトが使用する例が多く、スマートフォンと同じ感覚で操作できて使いやすいという声も出ている。
なぜ中小事業者を支援するのか
筆者は、STORES 予約の前身にあたる予約システムCoubicを手がけており、heyによるクービックのグループ化に伴い、STORES サービスの一つとして展開している。Coubicを開発し中小事業者の声を聞いているうちに分かった点が、予約は課題やニーズの一部でしかなく、売り上げや顧客管理をはじめ一つひとつを解決していくには、一元的に管理できるサービス群を提供する必要があるということだ。
すでに触れたように、SNSに刺激を受けて商品を買う、ネットショップで買った商品を実店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)、デリバリーなど、消費者の買い物の仕方や購買行動は変化している。中小事業者が対応できるように、さまざまな情報を一元管理できるオムニチャネル化のためのサービスを提供することが重要で、中小事業者を支援しエンパワーすることが、今後の流れ、業界の流れに沿ったものになる。
中小事業者との話で分かったのは、事業体は異なれ同じような悩みをもった同志として、そのビジネスにコミットしていくことの重要性だ。事業のオーナーとしてビジネスを成功させたいという思いを幾度となく知る度に、自分たちの事業に対する思いとも重なり応援したくなる。
■執筆者プロフィール
倉岡寛(クラオカ ヒロシ)
STORES VP of Product
2007年Googleに入社し国内の検索プロダクトマネージャーを担当。11年、グリーに入社し、米国支社の立ち上げやプラットフォーム事業責任者などを歴任。13年、クービックを創業し、代表取締役社長に就任。20年、クービックのグループ化に伴い、VP of Productに就任。