経済産業省によると、20年の日本国内におけるBtoCのEC市場規模は19.3兆円(前年19.4兆円、前年比0.43%減)とほぼ横ばいになったことが明らかになっている。ただ、内訳をみると物販系分野が大きく伸長し、旅行サービスなど、サービス系分野の減少で相殺された。加えて、調査結果では全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する電子商取引市場規模の割合を示す「EC化率」がBtoCのECで8.08%(前年比1.32ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展している点を指摘している。
BtoCにおけるEC市場の経年推移(単位:億円)
(出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」)
BtoCにおけるEC市場の市場規模と各分野の伸長率
(出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」)
中小事業者では何が課題となっているか?
自社開発や何らかのサービスを利用する場合を問わず、中小事業者における課題とまず考えられるのは、売り上げや業務オペレーションの煩雑化。例えば、一つの実店舗に加えてネットショップ店・SNS店・モバイル店など複数チャネルを展開するなど、実質的に複数店舗の開業となっても売り上げが複数倍になるわけではないケースが多い。
また、ネットショップであれSNSであれ、チャネルごとに対応業務が増え業務オペレーションは複雑になっていく。事業の拡大に合わせて業務上の負荷が増えるものの、売り上げを考えると、即座に人員増に踏み切るのは現実的ではないと判断せざるを得ないケースもある。
課題は、在庫、売り上げやキャッシュフロー、顧客などのデータがチャネルごとに存在し、連携を行っていないということだ。例えば、ある生活雑貨・食品などの小売業であれば実店舗の在庫管理とネットショップの在庫管理が連動していない。美容室や飲食店といったサービス業の場合、実店舗側では電話・FAXで予約を受け付けて独自システムで管理し、オンライン予約システムでの予約情報を手入力で書き写している。
解決するためには、自社の商品やサービスを購入する消費者の定着を目指す上でオンラインとオフラインなど販売チャネルを問わず顧客・在庫・売り上げ・人員などの情報を一元管理し蓄積できるようにすることだ。
■執筆者プロフィール

倉岡寛(クラオカ ヒロシ)
ヘイ VP of Product
2007年Googleに入社し国内の検索プロダクトマネージャーを担当。11年、グリーに入社し、米国支社の立ち上げやプラットフォーム事業責任者などを歴任。13年、クービックを創業し、代表取締役社長に就任。20年、クービックのグループ化に伴い、VP of Productに就任。