自宅に電話がなく、電話=携帯(個人)電話であり、知らない相手からの着信経験が少ないZ世代に、見ず知らずの相手と会話が始まる、会社の電話対応は非常に困難な業務であるといえよう。ただ、「電話は新人が取るべき」「新人研修で電話対応を学ぶべき」という考え方は、現在でも正しいのだろうか。
固定電話やFAXを使ったことがないZ世代
若手世代への調査では、電話対応が「とても苦手」「すこし苦手」だけで8割を占めている(ベースメントアップス調べ)。筆者も30年前の新入社員時代に、「ヒサダ」と「キサダ」という二人の上司がおり、名前を聞き違えて、こっぴどく叱られた記憶がある。
電話対応は、昔から新入社員が苦手とする業務であり、改善が進まない業務であることにまず気が付く必要がある。今回は、「メール、チャット、Zoom」など他の連絡手段があるにも関わらず、コミュニケーション手段の“王様”(中高年の間では)の電話対応について考察を進めていく。
電話対応に苦手意識がありますか(出典:ベースメントアップス)
世代による苦手意識の違い
若い世代の「電話への苦手意識」は中高年の「ITへの苦手意識」と同じであり、「スマートフォン設定が自分できない」中高年が、「最近の若者は電話すらまともに取れない」などと嘆くことは大きな間違いである。
各世代で得意とするコミュニケーション手段は異なっており、IT化が全体として進んでいない地方中小企業には「文書」「電話」「FAX」「メール」まで巧みに使いこなせても、業務分野で最近登場した「チャット」「ZoomなどのWeb会議」を苦手としている中高年が多い。
若い社員に「Zoomつないでくれ」と頼む人間が、偉そうに「若い世代は電話対応が下手」などと発言すべきではない。
リモートワーク、在宅勤務など多様な働き方の時代、業務コミュニケーション手段はチャットやZoomなどのWeb会議に代わってきており中高年こそが電話を捨てて、チャットやZoomなどのWeb会議を積極的に使うべきである。
そして、電話よりも生産性が高いチャット、ZoomなどWeb会議へ顧客との連絡手段を移行していくべき時期にきているのである。
生産性の低い同期型コミュニケーション手段の電話にいつまで頼り続けるのか
若い世代に優しい電話ツールを導入しよう
電話対応が苦手な世代を教育するよりも、顧客との主たるコミュニケーション手段をチャットやZoomなどのWeb会議に移行すれば、コミュニケーション履歴確認が容易になることで、上司が状況を正確に把握できるようになりトラブルも減少する。
しかし、そうはいっても電話は有効なコミュニケーション手段であり若い世代にも活用してもらわなければならない。
そこで当面はクラウド型CTIを活用し、電話対応の可視化を行い生産性と顧客満足度高める改善策をお勧めする。
例えば「カイクラCTI」であれば、KintoneなどとAPI連携しながら顧客情報を着信と同時に表示可能となる。会社名、電話番号を聞き取る手間から解放されるだけでなく、前回の着信日時や過去の着信回数まで把握が可能なほか会話に集中できるようになり、電話対応が苦手な若い世代の電話対応のハードルを大きく下げることができる。
また、カイクラCTI単体で録音機能も用意されており、電話対応の改善、パワハラ的な電話への対応なども可能となっている。
カイクラCTI
電話は数あるコミュニケーション手段の一つに過ぎない。「電話対応」は、個人の得手不得手が出やすい分野でもある。多様な働き方に対応するためにも、若手社員が電話に出ると決めつけず、会社の業務全体を最適化する目線で対応方法、改善方法をIT活用を含めて考えていく必要があるのである。昔からの当たり前にある業務こそデジタル化をおこない業務を改善することが、中小企業においてDXを進めていく一歩となるのである。
■執筆者プロフィール

樋口雅寿(ヒグチ マサトシ)
コムデック 取締役会長 ITコーディネータ
1972年、三重県伊勢市生まれ。95年、国立鳥羽商船高等専門学校を卒業。地元系IT企業などを経て、97年、コムデックに創業に参画、2011年に代表取締役社長、2022年 事業承継により取締役会長に就任。