「タイムカード」による勤怠管理は、実に19世紀の末から100年以上続いていており、現代において無駄・不要な要素満載の作業である。計算機が、電卓からパソコンへ、電話がスマートフォンに進化しているのに対し、タイムレコーダーが現在もオフィス入り口に鎮座し続けている光景は滑稽ですらある。紙のタイムカードによる勤怠管理は、無駄、不要な作業の代表格であり、中小企業ですら紙のタイムカードを使っていることは「恥」であるといい切っておこう。
オフィス機器における進化の過程
多くの中小企業でタイムカードの利用が続く原因とは?
一つめは、「タイムカードの集計に時間がかかり、給与計算に間に合わず困っている」と社長から相談依頼を受け、クラウド勤怠管理の説明を行っても、担当者の社長夫人やベテランの経理女性に「今のままで何とかなる」「お金をかけるほどではない」と断られることが多いが、本音は作業手順を変えるのが億劫なだけで、永遠に紙のタイムカードを利用し続けることになるという担当者による原因。
もう一つの原因として、「コストパフォーマンスが悪い」「ランニングコストが高い」と断られるケース。例えば、「クラウド勤怠管理」導入ケースでは20人程度の企業であれば月に8.5時間、年間約10日以上が勤怠管理に必要な時間削減が可能であり、「コストパフォーマンス」が非常に高いが、本音は「勤怠管理に興味はない」「勤怠管理にお金を使うのは勿体ない」だけなので、これまた永遠に紙のタイムカードを利用し続ける中小企業が多い原因となっている。
「クラウド勤怠管理」導入ケース
「紙のタイムカード」を手作業で集計する作業が非効率であることは、子供がみても分かることである。クラウド勤怠管理を導入すれば、出勤状況や残業時間がリアルタイムに把握できるだけでなく、残業・休暇申請、有給休暇管理まで対応でき、「生産性が向上」することで「費用対効果」「コストパフォーマンス」効果がある、しかし現場の改善意欲、社長の勤怠管理に対する知見不足により導入が進まないのが、クラウド勤怠管理なのである。
当社では1年をかけて担当者をフォローし続けながら、勤怠クラウド管理サービスを導入するサービスを展開している。中小企業は昔と異なり、人員不足で作業現場に余裕がなくなってきている、サービスの良い悪いではなく導入に当たってフォローがあるかどうかが導入の決め手となることもあるので、勤怠担当者も営業する側も苦労が続くが、勤怠管理は取り組みやすく効果が出やすいデジタル化なので、ぜひ導入を進めて欲しい。
また、クラウド勤怠管理でデジタル化された勤怠集計データは、給与計算に利用することでさらに生産性を向上させることができる。手作業による勤怠集計や給与ソフトへの転記は間違いの元。入力チェックや給与明細の印刷・配布時間は本来、無駄な作業・時間である。
中小企業では、未だにExcelで給与計算を行っていたり、税理士から勧められたインストール型の給与計算ソフトを既に利用していたりする場合が多いが、1台のパソコンでしか利用できない給与ソフトでは生産性向上は見込めないため、クラウド型に切り替えていきたい。
データ入力だけでなく、最新法令・税率の適用、バックアップ保管、そしてWeb給与明細書への対応など、クラウド化するメリットは多くある。勤怠管理と同じく早々にクラウド型給与サービスへ変更していくべきである。
マネーフォワード給与 Web給与明細
従来の紙のタイムカードや日報では、働き方改革法に定められた“45時間残業規制”、“有給休暇管理簿”には対応できず、働き方改革法対策の切り札としても、クラウド型勤怠管理、給与計算の導入は有効である。
また、会社だけでなく従業員側も勤怠状態が把握しやすくなる、有給休暇が取得促進される、Web給与明細や年末調整の対応が容易なるなどメリットは大きい。
中小企業のデジタル化では最初に会社全体でメリットを得られるサービスを導入していくとことが望ましい。デジタルで業務を回すことが当たり前となってくる状況を作り出すことが中小企業においてDXを進める一歩となるのである。
■執筆者プロフィール

樋口雅寿(ヒグチ マサトシ)
コムデック 取締役会長 ITコーディネータ
1972年、三重県伊勢市生まれ。95年、国立鳥羽商船高等専門学校を卒業。地元系IT企業などを経て、97年、コムデックに創業に参画、2011年に代表取締役社長、22年、事業承継で取締役会長に就任。