IT機器の「業界標準」作りにこれほど情熱を傾けている人はいない。「新しいビジネスを創造するのが、私のライフワーク」と言って憚らないほどだ。新技術を開発するスタッフが少ない三洋電機では、「かなり異色の存在」と、周囲の関係者は明かす。最近では、次世代のリムーバブルHDD(ハードディスク)「iVDR」を自ら開発。2年前にコンソーシアム(現在42社)を立ち上げ代表に就任。今年4月に製品化に漕ぎ着けた。「同じ夢を持ち、企業を動かす力のある他社の人と調整していくのが楽しい」
研究者としての功績を全て列挙するのは難しいが、一部を紹介する。2000年にauの携帯電話で世界で初めて音楽配信が開始されたが、この配信技術「ケータイdeミュージック」を提唱。時代に先駆けた。03-04年には、ホームネットワークの接続標準技術「iReady」と統合化標準技術「DarWIN」を提唱、東芝、シャープ、三菱電機が賛同している。「あまり、社内の仕事をしていないかな?」というが、三洋電機には、こうした存在を認める度量があるということだ。
月に1度は郷里の鳥取県で友人と共同所有の競技用ヨットで日本海に出る。たとえるなら、この人はIT業界のスキッパー(船長)の1人。「風を読み、瞬時に判断しないと、IT業界は動かせない」
プロフィール
日置 敏昭
(ひおき としあき)1953年、鳥取県生まれ。78年、静岡大学大学院修士課程電子専攻修了。同年、三洋電機の研究開発本部に入社。85年、主任研究員に就任し、ハイビジョン・ビデオディスク(MUSE方式)の技術規格を研究開発。97年、光ディスクの研究で工学博士。99年、携帯電話で音楽配信する技術「ケータイdeミュージック」のコンソーシアム代表に就任。02年、iVDRリムーバブルハードディスクコンソーシアムの代表に就任。趣味はヨット。1級小型船舶操縦士の資格も取得済み。