日本オフィス・システム(NOS)唯一の女性部長である市場香さん。顧客の要望に合わせてソフトウェアを開発する部隊の陣頭指揮を執っている。
そのなかで最も重視するのは、新しいプロジェクトを担う次代のリーダーの育成である。
「リーダーを1人育てれば、プロジェクトを1つ多く受注できる。5人育てば5つのプロジェクトを受注できる。リーダーの下につく部下も増員でき、また次のリーダーを育成できる」と、人材育成が受注の拡大に結びつくと話す。
限られた納期でプロジェクトを完遂するのは、ときにたいへんな仕事量を要求される。納期が迫ると徹夜が続くことさえある。
「やれと命じれば、仕事だと割り切って部下は動いてくれる。しかし、それでは非効率だし、スキルはあがらない」
「そうではなく、いかに集中力を高め、自分の能力をフルに発揮し、スケジュールどおりに仕事を進めるか。これが“幸せ”を手にする近道だと理解してもらうことがスキルアップに原動力になる」
幸せとは、サラリーマンとしての小さな成功ではなく、自己実現を果たしたときの大きな喜びを指している。人生をよりよく生きる道筋を示せれば、モチベーションが高まり人材は自ずと育つ。
「いつも部下1人ひとりが、それぞれの人生のなかで幸せを手にできるよう願っている──」
女性らしい穏やかな言い回しのなかに、強い信念が伝わってくる。
プロフィール
市場 香
(いちば きょう)1964年、兵庫県生まれ。87年、大阪大学経済学部経営学科卒業。同年、総合商社の兼松江商(現・兼松)入社。89年、兼松の情報システム子会社の兼松コンピューターシステム(現・兼松コミュニケーションズ)入社。02年、日本IBM系のソリューションプロバイダで兼松の関連会社の日本オフィス・システム入社。趣味は声楽。都内オーケストラの専属コーラス団体に所属。