「ウォークマン」の発売から11年目を迎えた1990年に、初めてウォークマンの開発に関わった。99年にはネットワークウォークマンの開発責任者に。ソニーは「自由にモノが言える風土」。さまざまな意見が飛び交うなかで、デザイナーや技術者などチーム全体の意見を束ねる。
HDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリタイプの携帯オーディオ市場は、アップルコンピュータのiPodのヒットを契機に巨大市場になった。もっとも、iPod人気について、「AV(音響・映像)メーカーではないアップルをライバル視したことはない」と余裕の表情。
「どうやったら音楽を快適に聴けるか」。ひたすら“本質の追求”にこだわる。意図したわけではないが、開発に携わるメンバーの約8割が音楽好き。「自分が持っていて楽しいもの」を作る姿勢を崩さず、上下関係を越えたブレインストーミングを重ねた。そして「音楽好きな人のため」の製品として、ソニーの本領発揮に賭けた。
今年4月に発売したネットワークウォークマンは、独自技術を生かして「3分充電3時間再生」を実現。有機ELディスプレイ、「ワンフィンガーオペレーション」、液体が入っているビンのような独特なデザイン…。新しい技術とアイデアを盛り込んだ。
「音楽が好きな人がストレスなく使えるように進化させていく。アイデアはたくさんある」。しかし、「音楽が好きな人だけにしかアピールできていない」とニーズを探っている。「まだまだやるべきことは沢山ある」。ウォークマンの進化は止まらない。
プロフィール
市村 公延
(いちむら きみのぶ)1964年、東京都出身。90年、ソニー入社。カセットテープ時代のウォークマン、ICレコーダー、ビデオCDプレーヤーなどの開発を手がける。99年、ネットワークウォークマン第1号機のプロジェクトリーダーを務めたあと、携帯情報端末クリエのプロダクトマネージャー。04年、再びネットワークウォークマンのプロダクトマネージャーに復帰。4月に発売したNW-E400/500を立ち上げる。