人の姿勢を分析して歪みを指摘するシステム「ゆがみーる」に、筋肉や骨の動きを3D画像で解析するソフト「解体演書」や「運動会で一番になる方法」などの子ども向けDVD教材。これらはすべて、黒田篤が2000年に設立したジースポートの開発製品だ。創業から一貫して健康維持などを支援するためのIT製品を作り続けている。
最近のヒット商品「ゆがみーる」は、独自開発した測定ベルトを体に巻きつけて専用マットに乗ると、ソフトが自動的に歪みを指摘する。そのユニークなコンセプトと解析器具、ソフト技術が認められ、マイクロソフトのITベンチャー表彰制度「Innovation Award 2008」で最優秀賞を受賞。フィットネスクラブや健診センターなどに約40システムの導入実績がある。これまでに1万人超が体験した。「ゆがみーる」の元となった研究者向けのシステム「ARMO」は、国立のスポーツ科学調査・研究機関がユーザーとなりオリンピック選手の姿勢を解析した。
黒田は、東京大学でコンピュータサイエンスを学び、多くの学友が研究者や教育者への道を進むなか、証券会社を選ぶ。起業意識がその頃からあり、「多くの企業経営を分析できると思ったから」だった。学生時代、医療画像の研究に没頭していたこともあり、「医師の代わりになるコンピュータを開発したい」と思って仲間1人と起業。最初の商品「ARMO」は詳細な分析性能が評判となったが、ターゲットユーザーが少ないうえに高額なことから売れずに苦しんだ。転機は高度な解析技術を一般にも受け入れやすいように改良したことから訪れた。それが「解体演書」であり「ゆがみーる」だ。
「IT企業の視点から医療現場のIT化を考えるのではなく、医療や健康にITがどう役立つかの視点が大事。だから、ジースポートはIT企業というより医療機器・サービス会社と言うほうがふさわしいんです」。医療・健康に役立つITは何か──。黒田は昔も今もそれを追いかけている。(文中敬称略)
プロフィール
黒田 篤
(くろだ あつし) 1971年10月17日、神奈川県生まれ。97年3月、東京大学理学系研究科修士課程修了。同年4月、ゴールドマン・サックス証券入社。00年7月、有限会社ジースポートを設立し代表取締役に就任。ジースポートは02年10月に株式会社に改組。