会社を内側から変革する──。三菱総研DCSでSI技術部に所属する野村聰江は、その変革を推進する一人だ。SI技術部は将来の事業環境の変化を見越して2004年に発足。野村のような若手技術者を集め、新しい技術の習得や社内の各事業ラインへ横断的に新技術を移転する戦略部門である。
景気の深い谷間にあるなかで、クラウドコンピューティングなど新しい技術が矢継ぎ早に登場し、多くのSIerが新技術の習得に翻弄される。DCSも例外ではない。「スキルアップやスキルのトランスファーが強く求められている」と、野村は危機感を強める。
SI技術部は当初、実験的に始めた取り組みだったが、今では全社の技術力アップに欠かせない存在へと発展した。約170人の部員の約半数を「自分より後輩に当たる、05年以降に入社した若手」が占める。上司からは、「前例にとらわれず、自ら考え、最善の行動をとれ」と、激励されてきた。野村は主に新入社員研修を担当しており、09年4月入社組の研修で5度目となる。部の発足当時は最若年のメンバーの一人だったが、今では多くの後輩を抱える立場に。その分、課題の重みも増した。
これまで若手中心の部門ということもあり、割とやりたいことを素直にやってきた。だが、これからは「先輩技術者のスキルトランスファーも手伝いたいし、自分ももっと上流の設計やコンサルティングを学びたい」。今まで積んできた経験を応用したい、と意欲を示す。
汎用機から分散コンピューティングへ、さらにクラウドへとアーキテクチャが変わるなか、「今こそSI技術部の真価が試される」と、気を引き締める。外圧で変わるのではなく、会社の内側から次世代の技術やビジネスに対応できるよう変革する。同時に「自分自身も“自ら考え、行動できる”スタイルへと内面から変えていく」。こうすることが技術者全体の士気を高め、厳しさが増すSI業界で勝ち残ることにつながる。(文中敬称略)
プロフィール
野村 聰江
(のむら さとえ)1978年、東京生まれ。02年、千葉大学法経学部卒業。同年、ダイヤモンドコンピューターサービス(三菱総研DCS)入社。04年、新技術の習得や社内向けの技術支援、教育研修などを担うSI技術部に配属。新入社員や内定者の研修を担当する。