30歳の時、神戸で検索エンジンの開発・販売事業で起業した。外資系の大手企業数社が市場を席巻し、日本のベンチャーが入り込む隙はないようにみえる。普通に考えれば、この分野での起業は躊躇するはずだ。だが、田中優に迷いはなかった。「日本には日本語に合った検索エンジンが必要」という強い思いがあったからだ。
田中は、二つの大学で地質学を学んだ。ところが、卒業が近づいた頃に就職先が少ないことに気づいた。そこで、独学でソフト開発技術を身につけ、ソフト開発会社に就職。だが、大手IT会社の下請けだったため、面白さは日増しに薄れ、転職を決める。
ニュージーランドに移住して、日本のソフト開発を請け負うオフショア開発会社を現地で立ち上げた。そして帰国後、外資系検索エンジン開発会社に入社。ここで田中は検索エンジンに出会う。
エクスプロージョンは、企業が自社サイトに訪問したユーザーの利便性向上のために組み込む検索エンジンを開発する。今では製品・サービスが広がり、レコメンドエンジンやSEOサービスなども手がける。「パソコン工房」のECサイトなど、約100サイトの導入実績をもち、「とりあえずは順調」という。
「楽して稼ぎたい気持ちはありますよ。でも、今のままで十分。神戸の小さなオフィスで、思いを込めた今のビジネスを続けて、食べていけるくらいお金があれば」。真剣な面持ちで過去を口にする無垢な印象の青年。その内側に強い信念を秘めて、夢の実現に迷わず突っ走る行動力をもっている。その時々で興味をもったことに純粋な気持ちで動いてきた田中だが、今は長期的に進むべき道を決めている。日本に合った検索エンジンの普及がそれだ。(文中敬称略)
プロフィール
田中 優
(たなか ゆう) 1977年12月6日生まれ。愛媛大学、大阪市立大学を経て、ソフト開発会社に就職。情報システム開発に従事する。その後、ニュージーランドに移住し、ソフトハウスを設立。帰国後、外資系検索エンジン会社に籍を置き、言語解析技術の研究・開発に携わる。2008年10月、検索・レコメンドエンジンの開発・販売などのエクスプロージョンを設立する。