テンダは、プロジェクト管理やモバイル関連ソフトの開発ベンダーとして業績を伸ばしている。中村繁貴は、同社がまだ客先常駐型のソフト開発が多かったときに頭角を表し、若くして役員に抜擢された。
学生時代、中村は社会福祉を学ぶなかで独居老人の孤独死が増えていることを知る。「人が愛されない社会であってはならない」と強く感じた。「ITが社会のイノベーションを誘発させるものであるならば、人が大切にされる社会に変える力もあるはずだ」と考えて、ITの世界に飛び込んだ。経営者や政治家になれば社会を変えられるとみて、入社当時から経営者になることを目指して仕事に取り組んできた。
しかし、現実は厳しい。客先常駐は人月商売で労働集約的。「野球にたとえれば、客先常駐は、実力のある外人選手のようなもの。成果報酬でユーザーの課題を解決する存在であるべき」と、ビジネスモデルの変革に挑んだ。結果的にこの分野で業績を伸ばしたことが会社から高く評価され、経営の一翼を担うようになる。
IT業界では、ハードウェアの販売で利ざやを稼ぐビジネスモデルが頭打ちになり、ソフト開発も製造工程は中国やインドに主軸が移りつつある。GoogleやFacebookがそうであるように、ソフト・サービスもフリーミアムな部分が増えるだろう。中村は「最終的に残るのはITと人をつなぐサービス」と考える。
学生時代に志した「人が愛される社会、ITを活用して人肌のぬくもりを感じられるようなサービスを数多くつくりだす。そのために、グループ会社をまるでアメーバのように数多くつくり、すぐれた経営者を数多く育てていく」と表明し、グループ経営による事業拡大に強い意欲を示している。(文中敬称略)
プロフィール
中村 繁貴
中村 繁貴(なかむら しげき)
1976年、東京都生まれ。99年、東京国際大学人間社会学部卒業。00年、テンダ入社。プロジェクトマネージャとして成功実績を積み重ね、大規模プロジェクトのシステムコンサルタントとしての評価が高まる。06年に取締役、11年に常務取締役就任。