辻川友紀が率いるシェアウィズは、ウェブ、アプリ上で社会人向け学習用サービス「ShareWis」を展開している。「会計」「英語」「プログラミング」「仕事術」などのテーマ別に、5~30分程度で終えられる学習コンテンツ同士がネットワーク状につながり、「知識の地図」を形成しているユニークな無料アプリだ。
学生時代、塾講師のアルバイトや自分自身の学習経験を通じて、既存の教育システム・ツールの硬直性に疑問を抱いた。将来は新たな教育関連の事業を起こそうと漠然と構想していたが、まずはグローバルなビジネスの現場を知るために、P&Gに入社した。そのなかで、P&Gが買収した剃刀製品メーカー、ジレットのワークフローを変える業務に携わったことが、「ShareWis」を発想する直接のきっかけになった。
辻川がボストンにあるジレットの工場に赴くと、工場長は壮年の男性。「カタカナ発音の英語を話す日本人の若造がいきなりやってきて、仕事のやり方をP&G流に変えろと指示するわけで、当然、反発心はあっただろう」と振り返る。しかし、苦労の末にミッションを達成した時、「わずかな知識でも、一生懸命伝えて共有できれば、人の心は動き、行動も変わる」と実感した。これを発展させて、「多くの人の知識をITでつなぎ合わせて『知識の集合体』をつくったら、世の中を変えることもできる」と考えた。
今年3月には、米サンフランシスコで開かれた日本のスタートアップ露出のためのコンペティション「第5回 SF Japan Night」で優勝。国際的に「ShareWis」のポテンシャルが高く評価された。この勢いのまま、「有料サービス・セミナー情報への誘導、さらにはクローズド版の社内研修システム開発などで事業を収益化し、創業5年以内の上場を目指す」。(文中敬称略)
プロフィール
辻川 友紀
辻川 友紀(つじかわ ともき)
1984年生まれ。2009年3月、京都大学大学院生命科学研究科統合生命科学専攻修了。同年4月に、P&Gイノベーション合同会社に入社。買収した企業のワークフロー構築や、女性用美容関連製品のカテゴリ・マネジメントなどを担当した。11年6月に退職し、12年2月、シェアウィズを設立。同社の学習アプリ「ShareWis」は、登録者数を順調に伸ばし、1万6000人に達している。