シンクライアントベンダーのワイズテクノロジーは、過去3年間で売り上げを約10倍に伸ばした。日本国内でのシンクライアント端末のシェアは、2011年に30.9%で1位を獲得した(IDC Japan調べ)。そんな同社の事業を成功に導いたのが、代表を務める松浦淳だ。
前職までエンジニアとしてキャリアを積んできた松浦は、「技術者で終わるのではなく、経営に携わりたい」という思いから、スタートアップして間もなかったワイズテクノロジーに転職。しかし、成功までの道のりは決して平たんではなかった。
05年に数人で立ち上げた同社は、初めのうちは事業が軌道に乗らず、松浦が代表に就いた08年までに、代表者が3人入れ替わっている。従業員が退職して、松浦一人だけで事業を続けざるを得なくなったこともある。代表に就任した当時も、「日本では認知度が低くて、営業に行っても相手にしてもらえないことが多かった」。
しかし、松浦は逆境に屈しない。前職で営業の経験がないなかで、「重要なのは“売る”ことに固執することでなく、いかに有益な情報を相手に伝えるかということ。技術的な裏づけをもって製品の優位性を説明できることが、エンジニアのバックグラウンドをもつ自分の強みだ」と認識して、商品の魅力を伝えていった。また、比較的競業しやすい中小SIerではなく、大手SIerとパートナー契約を結ぶことにこだわり、認知度と信頼の向上に努めた。結果として約10社との協業に成功し、大規模案件の獲得など、売り上げの向上につなげている。
そんな実績が評価され、11年には米本社から韓国事業の立ち上げを命じられた。現在では松浦は、日韓でワイズテクノロジーのビジネスを統括する顔となっている。(文中敬称略)
プロフィール
松浦 淳
松浦 淳(まつうら じゅん)
1975年生まれ。関西大学工学部を卒業後、富士通に就職し、企業向けネットワーク機器の開発を担当する。その後、シトリックス・システムズ・ジャパンに転職し、アプリケーション/デスクトップ仮想化のテクニカル・サポート業務に従事。06年、ワイズテクノロジーに入社し、08年には代表に就任した。11年からは米ワイズテクノロジーの韓国事業の立ち上げにも参画している。