今年5月、星川高志が代表取締役を務めるアプリベンダーのクラウドキャストと弥生は、資本・業務提携を発表した。2011年、クラウドキャストは弥生会計の入力インターフェースとして活用できる「bizNote for 弥生会計」で、弥生スマートフォンアプリコンテストのグランプリを獲得。これがきっかけとなって、2500万円の出資を引き出した。
もともとは生粋のエンジニアである星川。マイクロソフトでは、30代半ばにしてSQL Serverの開発部隊を率い、責任のある立場に就いた。しかし、だからこそみえた限界があった。「開発の責任者として本社の幹部と話す機会が増えると、開発の視点だけではビジネスのプレーヤーにはなれないことを思い知らされた」という。彼らと同じ立場で自分自身が事業を創造したい。そう思って、マイクロソフト在籍中に青山ビジネススクールの門を叩き、企業経営のスキルを自らに叩き込んだ。
提携に伴う弥生の2500万円の出資はマイノリティ出資。ここに星川の譲れない一線がある。これまでも、資本政策は経営の根幹だと考えてきた。そのノウハウこそ、ビジネススクールで得た最大の財産だ。
例えばベンチャーキャピタルは、投資した資金を急いで回収するために、経営に口を出しがち。「手っ取り早く資金を手に入れるという誘惑に負けてしまえば、経営の手綱は自分から離れてしまう。投資の専門家と渡りあうための知識とスキルを身につけたことで、自分のやりたいことをやり通すことができている」と、星川は自負している。弥生の岡本浩一郎社長には、そうした自分の思いを理解してもらったうえで、「リスクを取って出資していただいた」という。協業でウィン-ウィンの成果を出すことで、これに応える。(文中敬称略)
プロフィール
星川 高志
星川 高志(ほしかわ たかし)
大学卒業後、DEC(現ヒューレット・パッカード)を経て、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に移籍。米本社直属の開発部門で、法人向けモバイルアプリ検証部門の中心メンバーとして活動した。オフショア開発などのマネジメントを経験した後、SQL Serverの開発部門を統括。2009年、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(青山ビジネススクール)に入学。在学中にクラウドキャストを設立し、2011年、株式会社として法人化。経営管理修士(MBA)。