「マーケティングのキモはアナログの情報」──。弥生のマーケティングに大きな革新をもたらした立堀隆は、SEやITの導入コンサルタントとしてのキャリアをバックボーンとするマーケッターでありながら、「アナログの情報が大切だ」と言い切る。立堀がいう「アナログの情報」とは、ユーザーに直接会って話を聞くことだ。「お客様がどんな表情で、どんな口調で何を話されるのかを体感することは、ただ数字を見ているのに比べて何倍もの情報を得られる。そこでデータの本当の意味がやっとわかる」と話す。
業務ソフト市場は大きな転換期を迎えている。そんななか、立堀はBIソリューションを核に、全社の情報を一元的に集約・分析する専任部署を立ち上げて、今もその舵取りを担っている。データを経営の重要な資産として活用しようという大きな一歩の先導役への抜擢。テクノロジーに対する高度の理解と、弥生入社後のマーケッター、プロダクトマネジャーとしての実績を買われてのことだ。
ともすると、数字を追いかけることが目的になりがちなマーケティングの仕事だが、立堀には、「マーケッターは分析屋ではない。ビジネスの意思決定をサポートするために、『インフォメーション』ではなく、『インテリジェンス』としての情報を提供する義務がある」という強い責任感がある。データの分析結果を「インテリジェンス」に昇華させるための最後のキーが、ユーザーの生の声というわけだ。個別のプロダクトを担当していた頃は、自社の営業マンに常に同行し、ユーザーの反応や細かな不満を吸い上げていたが、今でも年間十数組のユーザーを取材している。「結局、一番大事なことは、弥生の製品でお客様の困りごとをどう解決できるか、役に立てるかという視点」というポリシーは揺らがない。(文中敬称略)
プロフィール
立堀 隆
立堀 隆(たつぼり ゆたか)
1973年、千葉県出身。1996年、明治学院大学を卒業し、エヌデーデーに入社。医療情報システムのシステムエンジニアとして、要件定義から設計・開発・導入・保守までを担当。2000年、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに移籍。ITコンサルタントとして大手企業のIT戦略立案に携わる。2004年、弥生に入社。パッケージソフトのプロダクトマネジャーやマーケティング戦略立案を担当した後、2012年に経営情報チームを立ち上げて、データ分析とマーケティングリサーチを統括している。