「ガッツがある」。長嶋孝之に対する社内の評価だ。結果を出すためなら手段を問わない(くらいの気持ち)。寝食を忘れて仕事に没頭することを苦にしない。困難な仕事を任されれば気分が高揚する。忙しければ忙しいほど充実感を覚える。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)に入社してから、たった7か月でシニアアソシエイトになった。まさに上り調子のまっただ中にあるが、どん底も味わった。
高校を卒業した直後、原因不明の病にかかった。入学が決まっていた大学には通うことなく退学。その後は入退院を繰り返し、次第に引きこもりがちになっていく。フィジカルもメンタルもつらい時期だった。そんなある日、ふと思った。「このままでは、ずるずるといってしまいかねない。この状況を変えたい」と。からだを鍛えるためにジムに通った。メンタルはアルバイトをやって社会に触れることで高めていった。やがて病気は完治し、再度の大学受験をパス。大学生活では、引きこもりがウソと思えるほど積極的になっていた。
「もともとブラックミュージックが好きだったので、どんなかたちでもいいから、その世界に触れてみようと。歌には自信がなかったので、DJに挑戦した」。やると決めた以上、オーディエンスの期待を超えるパフォーマンスを目指した。「店から、また頼むよなんていわれると、本当にうれしかった」。どんどんのめり込んで、気がつけば、集めたアナログレコードが3000枚ほどに積み上がっていた。
長嶋は以前、大手SIerで金融機関向けのシステム開発を手がけていたが、もっと経営寄りの視点で顧客をサポートしたいと考えた。「システム構築は要件の範囲に収めるのが普通。コンサルティングは、そこを超えたところに価値がある」。DJで得た喜びが、コンサルタントの原点になっている。(文中敬称略)
プロフィール
長嶋 孝之
長嶋 孝之(ながしま たかゆき)
1984年10月28日生まれ。埼玉県出身。09年3月、首都大学東京工学部卒業後、同年4月、大手SIerに入社。プライベートクラウドの導入や、法改正に伴うシステム対応などのシステム開発業務に従事。12年10月、プライスウォーターハウスクーパースに入社し、主に金融機関向けにIT関連サービスを提供している。