楊曉瑛は、26歳という異例の若さでTIS（上海）の営業部長に就任した。学生時代からの夢は社長になること。「小川（真司・現総経理）が退任した後には、私が総経理になりたい」と、はっきり語る。旺盛な上昇志向に加えて、意思が強く、中途半端が嫌い。そんな性格だから、「お客様からは、よく“鉄の女”だとからかわれる」。


　IT業界に飛び込んだのは8年前。当初は、パソコンの基本的なスペック情報さえ知らないIT音痴だった。しかし、持ち前の負けん気で専門知識を猛勉強した。そして、「トークだけの営業マンにはなりたくない」と、案件があれば作業現場に足を運び、実際に体を動かして技術力も身につけた。営業力と技術力を兼ね備えた楊は、まさに鬼に金棒。2008～09年は、クオリティソフトの資産管理ソフト「QND」を中国で最も多く販売した営業マンとして表彰されている。

　しかし、「過去の自分は“ひとり営業”。周囲のことは顧みず、案件を獲得して売上目標を達成することに終始していた」と振り返る。営業部長となった現在の課題は、個人ではなく、チームの力をいかに最大限に発揮させるかだ。技術者の得意分野や性格、顧客との相性などを確かめながら、案件ごとの人員配置に気を配る。「大事なのは、一人ひとりのメンバーをよく見て生かすこと。最近、会社のためにみんなで頑張れるよいチームに育ってきた」。

　ビジネス上の信念は、「モノを投げつけられても、前に進む」。部下が顧客とトラブルを起こしてしまった際には、必ず一緒に顧客のもとへ足を運ぶ。時には厳しいことを言われることもあるが、「部長としての務めですから」と責任を一手に負う。それでも、鉄の女は決して倒れない。（文中敬称略）