「遠隔操作でPCを物理的に壊すことができる」。映画の世界みたいだ。齊藤俊介は、パナソニックのノートPC「レッツノート」のセキュリティ機能を自信満々、かつ楽しそうに語る。遠隔操作でデータを消去するだけでは不安というユーザーの要望に応えた。物理的に壊すので、たとえ盗まれても、使うためには修理しなければいけない。修理に出したら、盗難PCだとバレてしまう。
高度なセキュリティ機能を実現できるのは、BIOSを開発できる技術者が社内にいるからだ。遠隔操作をBIOSレベルで行うため、OSに依存しない。BIOSに関する技術は、「国内唯一といってもいい」と自信をもっている。
パナソニックに入社し、BIOS技術者としてPCの開発に携わってきた。現在はBIOSの開発から離れ、PCの活用の幅を広めるためのソリューション開発を推進している。ノートPCの製品開発にあわせてBIOSを開発してきたが、ソリューション開発にはゴールが設定されていない。達成感みたいなものは薄くなったものの、新しいことをみつけて育てるのは楽しいという。「ゴールは見えないほうがいい」と最近では感じている。
趣味はロードバイク。トライアスロンの大会に出ていたこともあったが、仕事が忙しくなり、ロードバイクに絞った。休日に時間ができると、行くあてもなく、走ったことのない道を選んで遠出する。行った先々では、地域の人との会話を楽しむ。意外な発見がワクワク感に変わる。ゴールは設定しない。気の向くままにペダルをこぐことが楽しくてたまらない。
ソリューション開発は、やっていないことへの挑戦の連続だという。大変な反面、通ったことのない道にはワクワク感がある。「それを仕事で感じられるのが幸せ」と齊藤。ゴールはまだまだ見えない。(文中敬称略)
プロフィール
齊藤 俊介(さいとう しゅんすけ)
1980年静岡県生まれ。パナソニック入社後はBIOS技術者としてPC開発に従事。事業部初のクラウドサービス「遠隔データ消去サービス」を発案し、開発リーダーとして早期事業化を実現。最近ではクラウドサービス立ち上げのパイオニアとして、社内外での技術アドバイザもこなす。