ウェブサイトやブログ用のコンテンツ管理システム(CMS)を手がける早瀬将一。昨年、長女が小学校に入学すると、PTAが「誰かホームページ制作に詳しい人がいたら、役員に加わってほしい」と募集していたので、名乗りをあげた。地域に新設された小学校なので、ウェブサイトなども未整備だったのだ。ありきたりなコンテンツを並べてもおもしろくないので、新しい校舎の内外をドローンで撮影し、学校紹介の動画を掲載。「すごいPTAがいる」とネット上で話題となり、これがきっかけで地元市役所の観光課から映像制作の仕事が舞い込むなど、今ではドローン撮影が副業になりつつある。

本格的な撮影の経験はなかったが、学生時代の研究テーマは音を主題にしたメディアアートで、一時期デザイン会社に勤めていたこともあった。作品づくりの素養は心得ている。ただ早瀬は、芸術家気質ではない。同級生には現代音楽など難解な方向へ向かう人もいたが、自分は「技術をこう使うとおもしろくできるじゃん、という発想でつくっているだけ」と飄々と語る。
先の映像制作時には、前後してドローンの官邸侵入事件が発生し、役所の制作物にドローンを用いる“冒険”のぜひが問われる状況があった。早瀬は、安全策の説明などでネガティブ要素の払拭に努めると同時に、パイロット版の動画をつくり、ドローンの活用によってどれだけ印象的な映像になるかを提示。技術の価値をわかりやすく伝えることで関係者の理解を得た。
「一度使ってもらえれば、便利ですぐれたものと必ず理解してもらえる」確信がある製品も、その「一度」にこぎ着けるのが難しい。製品企画の仕事では、機能の開発や技術的な改善と同じだけ、「使ってもらう」ためデザインや見せ方の工夫にも労力を注いでいる。(文中敬称略)
プロフィール
早瀬 将一
早瀬 将一(はやせ まさかず)
1979年、茨城県生まれ。学生時代はメディアアートを学ぶ一方、シックス・アパートでのサポート業務に携わり、大学院修了後に正式に入社。途中、デザイン会社へ転職し約4年間ウェブサイトの運用を経験。2014年に再びシックスアパートへ戻り、現在はCMSサービス「MovableType.net」などの製品企画を担当する。