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教育機関
“失われた20年”にピリオド!?
スクール・ニューデール構想で
IT利用が遅れていると言われる教育機関。「三か年緊急プラン」ではこの状況を受けて、教育分野も強化ポイントに置いている。生徒に対するパソコン利用環境の整備に加え、地上デジタルテレビの設置を促すプランなどを盛り込んだ。教育機関に強いITベンダーは、この特需を掴もうと、プロジェクトチームを発足させる例もあり、大きなビジネスチャンスとみてすでに動き出している。
2005年までに世界最先端のIT国家になることを目指した「e-Japan戦略」や、その後の重点計画では、国内の学校、特に公立学校におけるIT環境の整備が打ち出されていた。だが、地域によっては、いまだにパソコンやインターネット接続などの整備に温度差が生じたままだ。地方交付税措置での整備であるために、自治体首長の考え次第で、教育以外に予算配分されてしまうことなどが要因だ。
今回の「三か年緊急プラン」に基づく臨時措置で、文部科学省が「スクール・ニューディール構想」として示したのは、国が整備費の2分の1を補助したうえで整備項目も明確に示す「ひも付き」予算であることが特徴。このため、特にデジタル教育に必要な整備が遅れている公立学校にIT機器やソフトウェアを提案するベンダーに朗報となった。スクール・ニューデール構想では、総額1兆1000億円の予算が組まれている。そのうち第1次補正予算で耐震やエコ改修工事で2641億円、学校への地上デジタルテレビとパソコンの配備で2098億円などが計上されている。富士通では、そのうち約1200億円がパソコンの需要とみており、「アカデミックディスカウントがあるので、利幅は薄いかもしれないが、プロジェクトチームを組んで獲りにいく」(パブリックリレーションズ本部政策渉外ユニット)つもりだ。
デジタル教育のソフトウェアや機器を開発・販売するチエルの川居睦社長は「学校向けにIT製品を提供するベンダーの業界では、今日までを“失われた20年”と呼んでいる」と、ようやく日の目を見る機会が訪れたとみている。
先の説明の通り、自治体で整備に温度差があったことや小泉政権下で実施された市町村合併、天災による被害、そして経済不況などが重なり、デジタル教育の整備が後回しになっていたためだ。今回の予算措置は、e-Japan戦略で積み残された、未整備のままとなっている校内LANや学習用コンピュータ、電子黒板やアナログ放送停波に伴う地上デジタル放送対応のテレビ、先生用の校務用コンピュータなどに限られている。
それでも「整備と活用が両立して、初めて教育の情報化が確立する」(チエルの川居社長)と、整備項目に示された機器の周辺機器、例えば、パソコンやテレビ配置用のファシリティーや校務用パソコンのセキュリティ対策など、関連需要も同時に生まれると期待する。
20年間も冬の時代が続いた文教向けIT機器販売。「売る側」である販売会社では、学校向けの専門販売員や担当部署を縮小しているケースが多い。学校向けに機器の利活用を含めて提案できる人員確保も、課題として浮き彫りになっている。
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電子行政・自治体
クラウド型にシフトか
官庁、自治体のシステムが連携も
官公庁・地方自治体のIT化や、IT利活用による住民サービスの向上は、「e-Japan」「e-JapanII」の重要なポイントの一つ。政策に詳しい富士通の森部泰昭・パブリックリレーションズ本部政策渉外サブユニット計画部長は、「電子行政・自治体ではある程度の成果が出ている」と評価する。レガシーシステムからオープンへの移行では292億円の経費を削減し、業務処理時間の削減効果は33万時間と、一定の成果は残した。ただ、住民基本台帳カード(住基カード)の普及率は2.3%、オンライン手続きは2010年に利用率50%と定めたが、現状は20.5%。課題は残っている。「三か年緊急プラン」には、この課題を解決するためのプランを盛り込んだ。官公庁システムでは、「各庁のIT化自体は進んでいるものの、連携が取れていないのが今後の課題」(森部計画部長)。共通業務でもそれぞれのシステムが稼働している状況で、コストがかかり、業務も非効率だ。そこで、「霞ヶ関クラウド」を掲げている。共通業務はサービス型の共通システムを活用しようというわけだ。一方、自治体では、ASP・SaaSや共同利用型のクラウドコンピューティングを積極活動して情報システムの刷新を推進するという。いずれもサービス型のシステム利用を提唱しており、官公庁や自治体のシステムが一気にサービス型に移行する可能性がある。現段階では「三か年緊急プラン」に具体策は明記されていないが、そうなれば情報システムの刷新案件が生まれ、需要が再燃するだろう。
IT活用の住民サービス向上では、「国民電子私書箱構想」がある。管轄する官庁や自治体に関係なく、国民が必要な情報をいつでも一つの窓口から手に入れられるプランで、決定すれば各官庁や自治体が連携したシステムが必要になり、システムの改良・強化案件が生まれる。市町村合併による情報システム刷新案件が一巡して、停滞感のある官公庁・自治体市場だが、今回の緊急プランが需要を喚起する可能性はある。