知恵を絞り始めたメーカー各社 2 コスト削減・環境戦略
不況を逆手にとる
メーカー
ダイワボウ情報システムの猪狩部長が指摘するように、今回の不況下でプリンタメーカーが推し進める「コスト削減・環境配慮」策が、ユーザー企業の“琴線”に触れ始めている。だが、企業内のプリンタ環境の実態は、「3台あれば、2台は稼働停止している状況」(大塚商会の本多執行役員)に変わりはない。それでもメーカー側はここに目をつけた。
例えば、20万円のA4カラーレーザープリンタ3台の導入を提案する際、「古いプリンタ3台と交換すれば3年で減価償却できる」と説明する。その裏付けは、機器自体が性能アップして消費電力が削減でき、旧機種に比べてトナー消費もCO2も削減できることにある。エプソン販売の宮西徳郎・プロダクトマーケティング部長は、こうした傾向もあり「このところリプレース案件が減っていたが、最近はこれが5割から6割に増えた」という。新旧機器を買い替えるコスト効果をきちんと訴求することで、需要が増しているのだ。ここ2~3年は、リプレース需要が減って苦境にあったプリンタ業界には朗報だ。
ここにきてプリンタメーカーは、「不況」を逆手にとり始めているといえる。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、片面と両面が同じ速度で印刷でき、低消費電力で素早く立ち上がるA3カラーレーザープリンタの新機種を発売。「新機種の『売り方のノウハウ』を発売前にパートナーと共有した」(松永圭司・ページプリンタ販売企画課長)ことも手伝って、コスト削減と環境配慮を意識する企業にヒットしつつある。松永課長は「今年7~12月も大型見込み案件が目白押し」と、久々に明るい材料が揃ったことに安堵する。
リコーでもA4カラー機が急速に伸びているという。同社はA4領域の製品が薄く、今年に入ってここに新製品を投入したことも影響している。この機種を前面に押し出して、この先に発生するコストを導入前に診断するサービスで切り込み、リプレース需要をつかんでいる。「省スペース機のニーズが高まっている。集中と分散をうまく使い分け、最適配置の提案をしている」(宮崎章二・プリンタ販売計画室長)と、同社のデジタル複合機(MFP)をセンター機に据え、部門機としてシングル機を勧める提案方式などが、徐々に受け入れられるようになっているようだ。
別な切り口で、プリンタが低コストで導入できることを提案するメーカーもある。エプソン販売は、昨年12月から今年3月まで「エンドユーザーに対して直に低価格を訴える」(宮西部長)ことで代理店が売りやすくなることを目指した「お得祭り」を実施。「レーザーだけでなく、インクジェットを組み合わせれば、低価格で導入できる」(同)と訴え、在庫が底をつくほど売れた。OKIデータは、昨年10月に出荷開始したLED(発光ダイオード)プリンタの新ブランド「COREFIDO」で「5年間無償保証」に移行し、今年3月には過去最高の月間3000台弱を記録。カウンターチャージビジネスをメインとしないディストリビュータ経由の2次店には特に受けたようだ。
この先の動きの“起爆剤”になるのかどうか、業界全体が行方を注視しているのが日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が7月中に開始する予定の「初期導入費0円プログラム」だ。通常数万円のインクジェットプリンタを無償にする代わりに、1万円程度のカートリッジを2年間購入する仕組み。「一定のボリュームを導入することが条件としてあるが、新規導入でなく、他社の旧機種のリプレースとして案件が出始めている」(挽野元・執行役員)という。条件つきながらプリンタの本体価格を「0円」にする取り組みは、ページプリンタがレンタル方式として定着するのかどうか、動向が注目されている。
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