紙媒体とデジタルが融合へ OKIデータでは、グリッドマーク社が特許をもつ見えないドットコード「GridOnput」技術を使った紙メディアとデジタルメディアを融合させるソリューション開発をしている。この技術は、紙メディアに印刷された写真やイラスト、文字の上にQRコードのような付加情報を加えられる。ペン型の「Gスキャナー」と呼ぶ赤外線小型カメラを情報の入ったところに置き、ペンをパソコンに繋ぐと、付加情報を見ることができる。
同社は、この次世代媒体を作成するツール「Grid Layouterソフトパッケージ(仮称)」を今年9月までに発売する計画だ。例えば、通信販売会社が顧客に配布する情報紙にペンを加えたソリューションを構想。通販情報誌で梅干の欄にペンを当てると、この梅干を使った料理のメニューを見ることができるという具合だ。OKIデータの池田隆志・ソリューション推進チーム担当課長は「グリッドマーク社に当社のLEDプリンタが唯一、認定された。個別案件ベースでソリューション展開の拡大に役立てる」と期待する。
一方、業種特化の特定用途ではないが、日本HPでは、持ち運びできるA4インクジェットのモバイル型プリンタが、新たな一般オフィス向けとして販売を急激に伸ばしている。「保険外交員など「モバイルワーカー」が出先の顧客に対し、その場で契約事項や見積などを打ち出す際に利用されているという。同社プリンタを流通する丸紅インフォテックの鳥羽裕之・ハードウェア2課長は「当社営業担当者は、このモバイルプリンタを現場見積で使っている」と、需要ゾーン拡大に可能性を秘めたプロダクトといえる。
5 「売り手」戦略
成長余地ないが、
台数減は困る
ダイワボウ情報システムでは、プリンタ販売に期待と不安を交錯させている。猪狩司・販売推進部長兼マーケティング部長は「プリンタ事業は当社の“優等生”」としつつも、「市場が活性化することは期待できない」と、成長の余地に疑問を呈する。しかし、冒頭で説明した通り、コスト削減・環境提案はユーザー企業に受け入れられており、「省スペース、省エネがポイントになる」(同)と、メーカーに機器などの革新を要望する。
同社のプリンタ販売では、ここのところ、ブラザー工業が昨秋に発売した世界最小のA3インクジェットプリンタが狭隘スペースの小売業などで需要が盛んになっているそうだ。コスト削減と省スペースの用途への提案に市場を拡大するカギがあると見ている。最近のコスト削減要求に応えるため、同社では、独自に自社のトナー使用削減ソフトをプリンタに組み込んで販売する複合提案でビジネス拡大を目指している。
一方、丸紅インフォテックは、プリンタ機器の販売が急激に伸びる要因が見出せていない状況だが、「ネットワーク化が進展し、オフィスの“島”に1台というニーズが拡大している」(鳥羽課長)と話す。このため、同社が販売を強化する台湾メーカーのアスースのネットブックなどクライアント端末や、「認証」を切り口としてセキュリティなどとプリンタを組み合わせた導入促進策を模索するという。「プリンタの新規販売が減ったり、既存プリンタを競合他社に入れ替えられると、消耗品などの販売に影響する」と、手を緩めることはしない。
epilogue
問われる「売り手のソリューション」力
プリンタメーカーや流通卸では、光明が見えつつあるうちに、需要をさらに喚起して上昇起動に乗せようと躍起になっている。しかし、プリンタ機器の「売り手」の主力である事務機ディーラーには、依然として“箱売り”を主体にするベンダーが多い。大塚商会では「プリンタを専任で営業する部署とシステム営業の壁を取り払い、相互連携できる組織体制に改めた」(本多豊・執行役員)と、プリンタを「売る側」の意識改革の必要性を訴える。
同社のように「プリンタ」というプロダクトを考慮して販売体制を改善す続けるSIerや事務機ディーラーはまだ少ない。メーカー側の機器改善やソリューション提案などが充実しても、「売り手」が育っていないのが現状だ。
クラウドコンピューティングの時代が到来しても、紙に出力する文化はなくならない。むしろ、コンプライアンス(法令遵守)上の紙文書のセキュリティや業務効率化をするうえでの電子文書管理など、ドキュメント周りの再構築の重要性は増すばかりだ。SIerや事務機ディーラーには、プリンタ関連のソリューション力の充実が求められてくる。