《SIerの状況》
ストレージが事業の柱に サーバーとの“両輪”で展開
サーバーの販売を主体とするSIerでは、サーバー需要の停滞に陥っており、代わってストレージの販売に重点を移してきている。まだ母数は小さいものの、今後はサーバーとの“両輪”でストレージ事業を展開する方針だ。
「サーバーは厳しい状況が続いている」と、話すのは、日本ビジネスコンピューター(JBCC)の営業推進事業部マーケティング担当の近藤隆司理事。国内ではサーバー市場が成熟しつつある。同社にとってサーバー事業はハードウェアで高い比率を占めているだけに痛手だ。「その代わりにストレージが順調に伸びている」という。これは、サーバーの統合化や仮想化が進んでいることで「ストレージを解決しなければならないという意識が高まっている」からだ。構築前にはコンサルティングを展開。「ニーズに応じて、ストレージの仮想化も提案している」としており、SAN構築が可能なIBM製のストレージ「SVC(サン・ボリューム・コントローラ)」を提供している。
日本事務器では、ストレージの製品やサービスをパッケージ化して提案。「さまざまな製品を扱っている強みを生かして売れ筋商材をパッケージ化したので、ユーザー企業に受けがよい」(技術本部ITサービス部の高井俊彦部長)と自信をみせる。また、ITサービス部のなかにはプラットフォームの観点で製品互換性の検証やシステム価格を割り出す見積センターを組織化しており、「仮想化やバックアップなどのニーズが高まっている」(堀博・見積センターリーダー)。このような情報収集を踏まえて捉えたパッケージ化しているわけだ。
販売では、「現場での交渉に技術者の『PTE(プラットフォーム・テクニカル・エンジニア)』を行かせることで提案の幅を広げている」(事業推進本部プラットフォーム事業推進部の平山宏部長)と、技術と営業の双方で案件を獲得している。ストレージがフォーカスされ始めているという事象は、SIerにとって新しいビジネスを生むことにつながる。
《市場の状況》
単価下落で明暗分かれる 新サービス提供の動きも
SMBのストレージ市場を巡っては、ディストリビュータの明暗が分かれている。単価下落が激しく、思うように利益が稼げない状況にあるからだ。しかし、一方でサービスを創造することによって、販売代理店が売りやすい仕組みをつくる動きも出てきている。

丸紅インフォテック 鳥羽裕之課長
「苦戦している」。丸紅インフォテックの鳥羽裕之・MD・販売推進本部MD1部ハードウェア2課長は、現状についてこう話す。同社が扱っているストレージ機器は、バッファローやアイ・オー・データ機器などのNASといった廉価モデルが中心。価格はこなれているものの、09年1~9月の売上高は前年同期よりも20%減になったという。背景には、昨年からの景気低迷でSMBの設備投資意欲が減退したことがある。9月以降は景気が回復傾向にあるものの、「依然として厳しい状況が続いている」という。
ただ、「企業内のデータ量は減ることがなく、バックアップの重要性が問われている。先行きは暗くない」(鳥羽課長)と分析しており、反転攻勢の取り組みを進める。具体的には、バックアップソフトと組み合わせた販売といった「単品勝負ではなく付加価値を提案していく」という。製品群では、大規模ストレージの販売も強化していく考えで、「今よりも5~10%でも売り上げを伸ばす」と闘志を燃やす。
ダイワボウ情報システムは、20万円程度といった低価格NASの販売台数が伸びている。猪狩司・販売推進本部販売推進部長兼マーケティング部長は、「SMBからのストレージに関するニーズは高い」と説明する。
同社は、ストレージの売上高に対する低価格NASの割合が80%強を占めている。売れているのは、容量が1~2TBの製品。残り20%は中大規模ストレージとなっている。09年度(10年3月期)上期は台数が好調だったものの、単価下落で売上高が前年よりも微減。しかも、減少傾向にあることから「危機感はある」と打ち明けている。
利益拡大に目を向け、今後はSANストレージに力を入れる。仮想化環境の構築やクラウドコンピューティングを見据えたデータセンターの増設を背景に「SAN需要が伸びるだろう」(猪狩部長)とみているからだ。SANストレージの販売強化については、08年下期にストレージ大手のEMCジャパンと契約を締結しており、09年度下期から全国的な販売促進活動にも乗り出している。ストレージを単体で売るのではなく、仮想化環境の普及を睨み、クライアントPCやサーバーなどと組み合わせてソリューションとして売り込むというわけだ。

CTC SP 渡辺裕介部長
ネットワーク関連に強いディストリビュータであるシーティーシー・エスピー(CTC SP)では、「SMB市場でハイ・アベイラビリティ(拡張性)に関するニーズが高まってきた」(企画本部営業推進部の渡辺裕介部長)と需要の高まりを実感している。この勢いに乗って、販売代理店に対する支援強化を図る。今年10月中旬からは、テクニカルサービスを含めたシステム構築をメニュー化。製品やサービスごとに料金を体系化しているため、ユーザー企業は予算に応じて製品やシステム構築、サポート、サービスを購入できる。販売サイドについては、「要望に応じて当社がテクニカルサービスを行うので、販売リセラーにとっては売りやすい仕組みなのではないか」と分析している。新サービスの提供で需要を喚起するということである。