これが“売れる”V
『WAF』
廉価版が登場、SaaS提供も後押し
このところ、悪意をもって個人情報を入手することを目的に、Webアプリケーションのぜい弱性を狙ったSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといった脅威による攻撃が急増している。
こうした攻撃は、通常のファイアウォールやIDS/IPSでは検知が難しい。インターネットビジネスが盛り上がりをみせるなかで、「Webアプリケーション・ファイアウォール(WAF)」の注目度が2006年頃から高まっていた。とはいえ、非常に高価な製品であり、価格が普及の障壁になっていたが、ここへきてバラクーダなどから廉価版が登場し、一気に需要が加速しそうだ。
Webサイトに何らかのぜい弱性が発見された際には、早急なアプリケーションの改修が必要になる。しかし、アプリケーションが古すぎて改修できなかったり、アプリケーションの仕様が不明なために改修できないケースもある。
さらに、改修には時間を要するので、その間はぜい弱性を放置したままになってしまう。こうした問題を解消するのがWAFなのだ。そのため、最近では、インターネットビジネス企業を中心に導入が進んでいる。
日本では、今後盛り上がることが予測される「PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)」でも、「Webアプリケーションレイヤファイアウォール」の導入を選択肢の一つとして示しており、この関連で需要が伸びそうだ。WAFは廉価版が市場に出回るなど、導入の幅が広がりつつあることも需要拡大を予測する理由だ。
一方、WAFはアプライアンス製品といったハードウェア型で提供されるケースが多かった。現在では、SaaS型での提供が始まるなど、クラウド・SaaSの需要拡大とともに伸びが期待できそうだ。
これが“売れる”VI
『大判プリンタ』
「即座にPOP作成」のニーズ高まる
破竹の勢いの「餃子の王将」。同社が他の外食チェーンに比べて業績を伸ばしている要因の一つに、オリジナルメニューを各店舗ごとに考案し、提供していることが挙げられるという。各店舗では、オリジナルメニューのポスターやPOPを店内外に掲示するというニーズが出てくることになる。従来、こうしたPOPなどを作成するには、印刷業者に大量発注して使っていた。しかし、これではコスト高で、時期や地域にマッチしたメニューをタイムリーに案内することができない。
一方、過当競争が続く家電量販店の各店舗のバックヤードには、最近、大判プリンタが置かれているケースが増えた。これも、「餃子の王将」と同じ理論で、タイムリーにPOPを貼り、集客や購買意欲を高める狙いがある。
今、こうしたニーズを受けて、大判プリンタの需要が伸びている。有力プリンタメーカーは、従来に比べて印刷工程全体のワークフローを効率化できる使い勝手のよい大判プリンタの新製品を出してきた。
国内大判プリンタのシェアトップを走るセイコーエプソンは、主力機「MAXART」シリーズを改良。大判販促物の内製化をこれまで以上に行いやすくし、「ブランドオーナー」と呼ぶ全国に店舗を置く小売店やGMS(大規模小売店)へ販促を開始した。対する日本ヒューレット・パッカード(日本HP)も、「高い生産性」を売りにした大判プリンタの普及機「HP Designjet L25500」シリーズを2010年3月上旬から順次発売する。
従来の大判プリンタは、重いロール紙を円形の土台(スピンドル)に差し込む作業が必要だった。天井の低い店舗では、長いスピンドルを扱うことができず、導入上の大きな障害となっていた。大判プリンタの作業の手間が低減でき、扱いやすくなったことで、POP制作などのニーズに応えられるようになり、各社の新製品が投入される2010年に需要が活況を迎えそうだ。 プリンタを販売する事務機ディーラーは、プリンタ需要の低迷で行き場を失いかけている。大判プリンタは新しい市場であり、提案しやすい商材のため、事務機ディーラーにとっては大きな武器になると思われる。

スピンドル部分が簡素化されて作業が楽になり、使いやすくなった
これが“売れる”VII
『IFRS関連ソフト』
有望株は「会計の最適化」訴求のERP
金融庁の「企業会計審議会」が2009年6月、「我が国における国際会計基準(IFRS)の取扱いについて(中間報告)」をまとめ、一定の要件を満たす企業に対し、2010年3月期の年度からIFRSによる連結財務諸表の作成を容認した。現在もIFRSの適用に関して政府や専門機関での議論は進んでいるが、国内でIFRSが財務諸表を作成するうえで重要性が高まることは必至だ。
これを受けて、会計システム関連の業務ソフトウェアを出すソフトメーカーや大手企業のSI(システム構築)を手がけるSIerは、「会計コンバージェンス」(IFRSへの順次統合)へ向けたソフト開発や提案を積極化している。
会計システム関連のERP(統合基幹業務システム)や固定資産関連のアプリケーションなどの基幹システム市場は、リーマン・ショックの影響で大きく冷え込んだ。2008年後半は、「J━SOX」対応で09年に基幹システムの入れ替えが進むと期待を寄せていたが、景気低迷を受けて案件自体の「延期・中止」が相次いだ。コスト削減を求める声も大きくなり、単純な「基幹システム入れ替え提案」では、ユーザー企業に受け入れられない状況になった。
そこで浮上したのがIFRSだ。多くのベンダーは「IFRS対応で会計の最適化を」と訴え、付加価値が高まるようIFRSを利用して次の浮上の機会を狙っているのだ。実際、この提案はユーザー企業に受け入れられつつあり、ERPベンダーなどの動きは加速している。
商社の採用が多いERP「GRANDIT」を出すインフォベックは、IFRSへのコンバージェンスに向けた機能強化を来年度早々に進める。固定資産システム最大手のプロシップも、2010年4月1日に強制適用される「資産除去債務」に関連する新ソフトを、他社に先駆けて出す。同社では固定資産領域のIFRS対応ソフトを順次出す計画だ。会計システム関連需要が低迷するなかで、IFRS関連のSIは伸びが予想される。
番外編
2009年のIT関連「10大ニュース」
(1)WiMAXの一部商用サービス開始(2月)
(2)米オラクル、サン・マイクロシステム ズの買収発表(4月)
(3)米シスコシステムズ、サーバー市場に 参入発表(6月)
(4)富士通、野副州旦社長が電撃交代(9月)
(5)「Windows 7」発売、法人市場に波及(10月)
(6)ITホールディングス、ソランの株式公開 買い付けを決議(11月)
(7)親子上場廃止相次ぐ(富士通ビジネスシステム、日立3社等)
(8)新ブランドプリンタの発表相次ぐ(キヤノン、富士ゼロックス)
(9)パブリッククラウドが台頭
(10)ネットブックがノートPC市場を席巻