NEC系
NECネクサソリューションズ
東名阪の中堅企業に全面集中
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| 森川年一社長 |
他の販売系SIerとは異なる戦略で、ソフト・サービス事業へのシフトよりもメインターゲットを明確にして組織再編で成長戦略を描いたのがNECネクサソリューションズ(NECネクサ)である。
NECネクサは今年度(2010年3月期)下期に東名阪の中堅・中小企業と、医療・公共機関にターゲットを絞る新体制で事業展開を開始した。従来から中堅に強いSIerを謳っていたものの、「実情は違っていて、NECと協力して手がける大企業向けビジネスが全売上高の約40%を占めていた」(森川年一社長)。結果、中堅企業向けビジネスを伸ばすための組織が未整備で、ここ5年ほど売り上げは停滞していた。
今回、NECや他のグループ会社も巻き込んで組織を再編し、中堅企業に特化した体制をつくり、潜在需要が大きい中堅・中小企業(SMB)マーケットを専門的に攻めることで業績を伸ばす。具体的には、王道ともいえる基幹システムの販売に力を注ぐ戦略で、NECグループのERP「EXPLANNER」で市場に攻め入る計画だ。森川社長は、「中堅・中小企業に集中できる体制に変わったことで経営しやすくなった」と話し、新体制に手応えを感じている。
まずはターゲットに定めた約1万2000社・団体のなかで、基幹システム関連ビジネスを現状の2倍にあたる1200社まで増やすつもりだ。
NECネクサもハード販売には苦労しているが、新たな製品・サービスにシフトするのではなく、狙うターゲットを明確化するという戦略で成長しようとしている。
富士通系
富士通ビジネスシステム
全国規模で中堅企業に特化
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| 鈴木國明会長兼社長 |
NECネクサソリューションズと同じように、中堅企業に特化した組織再編を推進しようとしているのが、富士通ビジネスシステム(FJB)だ。FJBはNECネクサと同じ悩みを抱えていて、大企業向けビジネスが多いためにSMB向けビジネスを加速させることができずにいた。
それを富士通グループを挙げて解消するため、中堅企業向けビジネスに特化し、グループの中堅向け事業のリソースをFJBに一本化しようとしている。中堅企業向けERPを戦略商品として位置づけ、まずは東名阪地域から攻め入ろうとしている戦略はNECネクサと酷似する。
ただ、FJBが違うのは、まだ新体制に移行が進んでいない点だ。「当初の予定では09年の10月からスタートするはずだったが、パートナー企業との調整が思うように進んでいない。かなり時間がかかる作業で、いつから新体制に移行できるとは明言できないが、富士通グループの成長を考えれば中堅企業に特化したSIerは子会社として必ず必要。時間はかかるかもしれないが、当初の計画通り新体制への移行を粛々と進めていきたい」と鈴木國明会長兼社長は語る。
その一方で、NECネクサよりも進んでいるのが、ソフト・サービス事業へのシフトだ。運用サービスやクラウドビジネスをすでに展開し始め、ハード売りからの脱却を試行錯誤しながら進めてきた。結果、ハードの販売および関連サービス事業は依然50%弱を占めているものの、利益構造が大きく変わり、ハード以外のサービス事業で稼いだ利益が主軸になっている。鈴木会長兼社長は、「ソフト・サービス事業へのシフトをさらに加速する必要がある」とし、ハード依存体質からの脱却に挑戦する方針を示している。
記者の眼
ソフト・サービスへのシフト、現実化の波
各社の戦略に多少の違いはあるものの、改革の骨子は同じ。ソフト・サービス事業へのシフトだ。仮想化技術とクラウドが浸透すれば、ハードはこれまで以上に売れなくなる。利幅が薄く、出荷台数も伸びないハードの販売に固執すれば、成長の目はない。この事情はディストリビュータも同じだ。丸紅インフォテックの天野貞夫社長は「メーカーの製品を右から左へ流すだけでは、今後生き残れない」と危機感を露わにし、付加サービスの追求を加速している。
「コンピュータ売り」とソリューションサービスは、求められるノウハウや体制が異なる。加えて、SaaS型サービスやクラウドが浸透すれば、売り上げの入り方が変わる。作って納めるシステム構築は一気に大きな金額を得られるが、クラウドやSaaSは基本的に一度に入る金額が少ないストックビジネス。資金繰りなど財務戦略の見直しも必要になってくる。
ソフト・サービスという新しい収益モデルを確立・定着させながら、利益構造の変化にも対応しなければならないのだ。今、SIerは大きな転換期に立っている。目先の売上高だけでなく、中長期的な視点で構造改革を進め、経営戦略を練り直さなければならない時だ。