ネットワーク
成長率予測*
5%・30%
NI市場が動くのは2012年
2011年はサービス化へシフト ネットワークの構築や運用・保守などを展開するネットワークインテグレータ(NIer)は、2011年をICT(情報通信技術)業界の大きな節目とみている。NIer各社は、2010年中に顕著になったICTの「所有から利用」への動きがさらに加速化することを予想して、新しい流れに対応すべく、営業体制の改善や新規事業領域の開拓に取り組んでいる。
有力NIerは2011年の市場を、前半戦は大きな成長が期待できず、小康状態が続くとみる。次世代ネットワーク(NGN)の普及などが、NI市場に刺激を与えているものの、企業のIT投資が依然回復しないといった事情から、慎重な姿勢が目立つ。本格的な市場拡大は2012年以降と見込むNIerが多い。
三井情報は、「事業の完全なるサービス化を推進する」(下牧拓社長)ことを、2011年の経営方針に掲げた。2010年10月には、ITサービスの開発部隊として社長直轄の「ITマネジメントサービスセンター」(ITMS)を設立している。営業や技術サポートの役割を担うサービス事業本部とあわせて、サービス事業の強化を急ピッチで進めているところだ。
システムインテグレーション(SI)とNIの融合に注力している双日システムズは、2011年半ばをめどに、クラウドコンピューティング事業の一環としてSaaS型サービスを本格的に開始する。SaaS型サービスの第一弾としては、2011年からクラウド技術とインフラを活用したサービス展開を本格化させていく。
ICT環境のクラウド化の進化と普及が、NIerにビジネスチャンスをもたらしている。ネットワンシステムズの子会社、ネットワンパートナーズは、2011年、データセンター(DC)運用会社やクラウド事業者に向けたネットワークの基盤構築をサポートする事業を拡大させるなど、「クラウドの事業展開を加速化させる」(齋藤普吾社長)構えだ。
また、エス・アンド・アイ(S&I)は、次世代型コミュニケーションシステム「uniConnect」のクラウド化を図る。
クラウド関連のほか、NIerが成長のカギとみるのが、海外での事業展開だ。双日システムズは、10年4月にグローバルビジネス本部を設立し、中国やベトナムを中心に海外市場の開拓を本格化させた。三井情報は、2011年中にアジアと欧州にそれぞれサービス拠点を設立する計画だ。
2011年、成長に向けたキーワード
・ネットワーク編・
(1)NGN(次世代ネットワーク)の普及
(2)クラウド環境普及でネットワーク環境が変化
(3)“箱売り”からサービス型販売へ移行
(4)仮想化、データセンターの普及
コピー・プリンタ
成長率予測*
0%・5%
プリンタと新商材で市場開拓
クラウド型サービスも開始 2010年の国内コピー・プリンタ市場は、久々に前年実績を上回る台数を販売することができた。リプレース需要が高まったことや、ページプリンタに関しては、政府の「スクール・ニューディール構想」に基づく文教市場向け大型案件がけん引要因となった。
一過性の需要拡大にみえるが、状況は少し異なる。大塚商会の大塚裕司社長は、「ネット通販『たのめーる』でコピー用紙の注文が前年を大きく上回った」と話す。メーカー各社が訴求してきた製品自体の省電力化やトナーセーブなどを利用したコスト削減策などが奏功し、「これまで制限してきた印刷を増やすことができる」と、企業や自治体などでの印刷枚数が増えたという。
要因はそれだけではない。某大手ディストリビュータの幹部は、「顧客が高機能化するプリンタの利用価値を理解し始めただけでなく、どの機能を使えば安いコストで多く印刷できるかを知るようになった」という。メーカー各社の「提案型販売」が実を結び、従来の「箱売り販売」では得られなかった効果をもたらしているのだ。
メーカー各社に2011年の市況感を聞くと、伸びても2.5%という答が返ってくる。好況に沸いた2010年の反動が危惧されるということだ。 富士ゼロックスは2010年末、中国市場向けでA4低速機のLED(発光ダイオード)プリンタを投入すると発表した。山本忠人社長は「アジア、とくに中国で伸ばし、日本と含めて全体の顧客数を増やす」と、海外比率を高めると同時に同社のプリンタを利用する層を拡大する。一方、国内では中堅・中小企業(SMB)の開拓を急ぐ。同社にとってSMBは苦手領域であり、新規市場でもある。山本社長はシングル機と低速MFPの新製品を含めて「SMBの懐に入る」と、組織や販売体制の再構築に動く。
2010年とその前年の2009年に、自社開発低価格・高機能・省スペースなプリンタでSOHO市場で大きく成長したブラザー販売は、これまでに大手ディストリビュータの2次店や家電量販店ルートを開拓した。ただ、大手事務器ディーラーやシステムインテグレータ(SIer)の訪販ルートはまだ薄い。このため、片山俊介社長は「ラベル作成プリンタなどの自社開発のハンディーターミナルで、小売・流通業、製造業などに強みをもつSIerとの関係性を深める」と話す。自社で保有する新たな製品で、新たな収益を生み、新たなパートナーを獲得する狙いだ。
OKIデータは、2009年と2010年の2年間で「5年間無償保証」のLEDプリンタ「COREFIDO」が国内で想定以上に市場シェアを高めた。堅調に市場を拡大するなかで、同社の課題となっている領域が、大手SIerや地場の有力SIerが得意とする官公庁・自治体や金融機関だ。2010年中には、この領域を攻める弾として必須のA3モノクロ機やA4複合機など、不足していたラインアップを揃えた。杉本晴重社長は「他社で進んでいないマネージド・プリント・サービス(MPS)をいち早く軌道に乗せるなど、コピーメーカーが強い領域とSIerと一緒に開拓したい」と、新たな展開を検討中だ。
エプソン販売は、2011年からクラウド・サービスに手をつける。ネットワーク上のストレージにデータを蓄積して利用する企業が増えることを想定し、こうしたデータが既存のプリンタで負荷なく印刷できる環境を整える。このほかでは、プリンタで「導入コストと運用コストを下げるニーズが高い」(平野精一社長)と、インクジェットプリンタの販促を強化するほか、リプレース時期に差しかかっているプロジェクタの販売に期待する。
2011年、成長に向けたキーワード
・コピー・プリンタ編・
(1)リプレース需要が引き続き堅調
(2)箱売りから提案型販売へシフト
(3)ストックビジネス減に対応した新商材
(4)MPS(マネージド・プリント・サービス)の普及
*2010年末に各業界に関係するメーカーや販売会社のトップに、各社の成長率を聞き、その下限と上限を数値化した。