今年に入って、TwitterやFacebookなど、ソーシャルメディアの利用者が急増しており、サービス業や製造業の企業がソーシャルメディア内のデータをマーケティングや製品開発に生かすニーズが拡大している。そんななかで、ITを駆使し、ソーシャルメディアに蓄積された情報を収集・分析して、ビジネスに活用するソリューションに力を入れるITベンダーが現れている。この特集では、注目が高まっているソーシャルメディアの分析・活用という新商売を追う。
ソーシャルメディアとは
総務省は、ソーシャルメディアを、「ブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、動画共有サイトなど、利用者が情報を発信し、形成していくメディア」と定義している。日本では、ブログをはじめ、SNSの「mixi(ミクシィ)」や動画共有サイトの「YouTube(ユーチューブ)」などのソーシャルメディアが数年前から人気を集めている。これらに加えて、ここ数か月は、友人や同僚と交流するSNSの「Facebook(フェイスブック)」と、短文を投稿するマイクロブログの「Twitter(ツイッター)」の利用者が増大している。FacebookとTwitterは、アメリカと比べて日本では普及が遅れているといわれるが、電話やメールが通じなくなった東日本大震災直後、安否確認ができるツールとして注目を浴びるなど、急速に認知度を高めている。
データの膨大化、ITの出番!
マーケットは大手企業だけではない ソーシャルメディアの利用者が増加するということは、ソーシャルメディア内において、企業の製品やサービスに関する消費者のコメントや、ユーザーの要望や感想など、企業にとって気になる情報が爆発的に増えるということを意味している。
蓄積されたデータから特定項目を探し出すテキストマイニング用ソフトを提供する日本IBMソフトウェア事業の米持幸寿クラウド・エバンジェリストは、「東日本大震災後、当社のソフトを使って、Twitterで『地震』や『震災』のキーワードを検索したら、たった1日で70万件の関連情報が出てきた。ソーシャルメディア内の情報が大量化するあまり、手作業でのデータ分析・活用はもう無理な段階に入っている」と、ITソリューションの出番を熱く語る。
中堅・中小企業も有望市場 日本IBMなど、ITベンダーがこのタイミングでソーシャルメディアの分析・活用ソリューションに力を入れている背景には、TwitterとFacebookの人気が急速に高まってきたという事情がある。日本ではmixiやYouTubeなど、これまでにも多くのソーシャルメディアが利用されてきたが、これらの媒体は、日記を投稿したり、音楽や映像を視聴したりといった用途が大半で、企業が自らのビジネスに生かすデータを手に入れるソースとしては、それほど有効ではないようだ。これと異なり、TwitterやFacebookに代表されるマイクロブログとSNSは、情報を書き込んだり、情報を投稿・提供したりする利用シーンが多く(総務省調べ)、企業が望む“お客様の声”の膨大なデータベースとなる。
ソーシャルメディアの分析・活用ソリューションを提供するITベンダーは、コンタクトセンター(CC)をもつユーザー企業を主なターゲットにしているが、それは必ずしもソリューションの提案先を大手企業に絞るということではない。中堅・中小企業(SMB)の売上高が全体の約6割を占めるというセールスフォース・ドットコムのプロダクトマーケティング・榎隆司執行役員は、「ヘルプデスクや技術サポート、テレセールスなど、何らかのかたちでコンタクトセンターをもっていない企業はほとんどいない」と語るように、SMBもソーシャルメディアの分析・活用ソリューションの有望なターゲットとなりそうだ。
次はLinkedInに着眼 TwitterとFacebookのほかに、ユーザー数が増大するソーシャルメディアとしてITベンダーが注目しているのは、ユーザーの履歴情報を中心とするビジネス活用に特化した「LinkedIn(リンクトイン)」である。CC向けソリューション「Social Media Manager」(LinkedIn未対応)を展開する日本アバイア アジア・パシフィックCCソリューションの阿部誠マネージャーは、「LinkedInを使って、営業担当者が企業にアプローチするためのコネクションを探すことができる」として、「Social Media Manager」をLinkedInに対応させ、営業活動ツールとしての提供を検討していくという。
次ページからは、ITベンダーがソーシャルメディアの利用者が急増していることをいかに商売に結びつけているか、各社の取り組みを紹介する。
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