日本マイクロソフト(樋口泰行社長)は、今年度(2012年6月期)期首に中堅・中小企業(SMB)事業を担当する部門の組織を見直した。ポイントは「パートナーが売りやすい仕組みの構築」。ITベンダーとの協業による間接販売体制を、従来以上に推進するために用意したのが今年度の組織だ。その中身と代表的なパートナーの声を追った。(取材・文/木村剛士)
協業による事業拡大 2011年2月に移転した東京・品川区にある日本マイクロソフトのオフィス。2階の受付ゲートの両脇には、大きなトロフィーが二つ、ゲートを挟むように飾られている。その一つは、米本社が米国以外の先進5か国(日本、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ)のうち、最も優秀な成績を納めた外国法人に贈る記念トロフィーだ。2010年度(11年6月期)、日本マイクロソフトは世界No.1の成績を収めた外国法人であると、米本社に認められた。このグループ内表彰制度がスタートして以来、初の快挙だった。「成長が止まった国」と揶揄される日本だが、マイクロソフト内の話だけでいえば、日本は最も存在感を示している。
今年2月に設立25周年を迎え、それを機に本社を移転するとともに、社名を変更した日本マイクロソフト。今年度は、新社名でスタートした初めての年度になる。今年7月に開いた恒例の新年度経営方針説明会で、樋口泰行社長は「デバイス/コンシューマ」「クラウド」「ソリューション」をキーワードに掲げ、ビジネスを加速させる意気込みを示した。「Windows Phone」の新製品投入によるスマートフォン市場での巻き返し、「Windows Azure」と「Office 365」を核としたクラウド事業の急成長、そしてソリューションビジネスの拡大に力を入れる。
そのなかの一つである「ソリューション」。樋口社長は、この領域では「パートナーとの協業によるビジネス拡大」を強調している。これは、IHVやISV、ディストリビュータ、SIerといったITベンダーと“エコシステム”を構築し、協業会社(パートナー)を通じてユーザー企業に間接的に製品・サービスを売る体制を強化することを意味している。とくにSMB(中堅・中小企業)市場では、このパートナーとの連携が一層重要になることを樋口社長は常々表明している。

No.1の実績をあげた外国法人に贈られる記念トロフィー。日本マイクロソフトのエントランスに飾ってある
新組織はパートナー支援を重視  |
| SMB事業部門を率いるバートランド・ローネー執行役常務 |
今年度(12年6月期)の期首、日本マイクロソフトは、SMBを対象とした事業(ゼネラルビジネス)部門の組織を刷新した。その目的は、「パートナーが日本マイクロソフト製品をこれまで以上に販売しやすい仕組みをつくること」(川原俊哉・業務執行役員パートナービジネス営業統括本部統括本部長)にあった。
日本マイクロソフトは、洗練されたパートナー支援制度を運用している。昨年10月にはそのパートナー制度を大幅に見直して、内容に厚みをもたせた。パートナー数は約1万2000社にも上る。一見すると強固な“エコシステム”を全国で構築し、ソリューションをつくるための製品が売れているようにみえる。しかし、実態はそうではない部分があった。
3年前からゼネラルビジネス部門を率いるバートランド・ローネー執行役常務ゼネラルビジネス担当は、「(パソコン向けの)OSと『Office』の販売額が全体に占める比率が高く、他の製品が伸び悩む時期は確かにあった」と認めている。ローネー執行役常務は、その課題を解決するために、3年をかけてパートナー支援の体制と施策を見直してきた。その結果が、「少なくとも昨年度No.1の海外法人と称えられたことに貢献しているはず」と自信を示している。
そして、新社名でスタートした最初の年度、日本マイクロソフトは組織を改変した。パートナーとの協業によるソリューションビジネスの拡大を図るための新たな仕組みだ。図に示したのが、ローネー執行役常務が率いるゼネラルビジネス部門の今年度の大まかな組織である。この体制をつくった狙い、各事業部門の役割を次ページで詳説する。
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