2015年に4兆元!! 中国の情報サービス・ソフト市場は向こう4年で、2010年比およそ3倍の約48兆円に拡大する可能性が出てきた。中国情報サービス業界団体が見通しを示したもので、日系SIerは成長する中国でのシェア拡大の取り組みを加速している。
“48兆円市場”に挑む
売上高は前年比30%増へ
高い目標を掲げて国も後押し 中国の情報サービス・ソフト市場が勢いよく伸びている。2011年1~8月の累計売上高は前年同期比30.5%増の1兆1120億元(約13兆3400億円)。8か月ですでに2010年通年の1兆3364億元(約16兆300億円)に迫りつつある。中国・青島で今年11月2日に開催された第15回日中情報サービス産業懇談会で、中国側が明らかにした数字だ。年々膨らむ中国市場のスピードに、日系SIerは果たして追いつくことができるのか。
高度成長は十分に可能 まずは、第15回日中情報サービス産業懇談会で明らかになった中国情報サービス・ソフト業の最新の動きからみていこう。
2011年1~12月期が大詰めを迎えるなか、中国情報サービス業界団体の中国軟件行業協会(CSIA)は、通期で前年比30%増の1兆7000億元(約20兆4000億円)前後に着地するとみている。CSIAの陳冲理事長は、「足下の受注の勢いが落ちていないことから、昨年同様、2011年も年率30%相当の成長は十分に可能」と、手応えを感じている。さらに驚くべきことに、CSIAは2015年までの4年間の成長イメージとして、情報サービス・ソフト業の売上高を4兆元(約48兆円)に拡大する目標を示した。
CSIAでは、関係各所から完全にオーソライズされたものではないと前置きしつつ、業界規模4兆元を達成するためには、2015年までに情報サービス/ソフトウェアで年間1000億元(約1兆2000億円)を売り上げる都市を10か所以上に増やすことと、年商100億元(約1200億円)のSIer・ソフトベンダーを10社、1000億元(約1兆2000億円)の超大手のSIer・ソフトベンダーを数社育てたいとしている。
東芝ソリューションやNECなどと提携関係にあり、日本でも知名度が高い中国大手の東軟集団(ニューソフトグループ)の2010年12月期の連結売上高でさえ49億3700万元(約600億円)であることから、いかに目標を高く設定しているかがわかる。達成可能かどうかは未知数だが、少なくとも中国情報サービス・ソフトウェア業界では、成長に確かな手応えを感じていることはまぎれもない事実だろう。
振り返って日本の情報サービス業の売上高は、経済産業省「平成22年特定サービス産業実態調査・速報」をもとに情報サービス産業協会(JISA)で集計した数値で、2010年は前年比8%減の19兆8000億円だった。実態としては、同業者間取引などを除いた“真水”で12兆~13兆円の市場規模とみられており、中国の2011年の1兆7000億元も“真水”の部分をどうみるかで、数字が大きく変わってくる。
大型投資案件が目白押し 調査会社のIDC中国は、中国情報サービス市場規模を、2011年は1166億ドル(約9兆3200億円)、2015年には2115億ドル(約16兆9200億円)に拡大するとみている。CSIAの集計よりはずいぶん控えめな数字だが、それでも年平均成長率はおよそ16%と、日本の成熟市場と比較すると驚異的な伸び率になる。
IDC中国の数字をもう少しみると、アジア太平洋の情報サービス市場に占める中国の割合は、2011年には27.8%の見込みが、2015年には34.9%へ拡大。世界の情報サービス市場でも同期間で6.8%から9.6%へ拡大すると予測する。この背景として、新興産業に対する戦略的な投資や、沿岸部に比べて経済発展の遅れが指摘されている中国内陸部の投資拡大がある。IDC中国は、ほかにもエネルギー対策としてのスマートグリッドや医療改革、鉄道、水利など、引き続きIT投資を伴う国を挙げての投資案件が目白押しの状況にあることを「大きなプラス要因」(楊挺・主管研究経理)とみている。
有力SIer・ソフトベンダーの育成に関しては、中国政府がIT産業向けの政策の一部として公表した通称「4号文書」が注目を集めている。政府や自治体の電子化を推し進めるとともに、国有企業をはじめとする大企業の情報システム部門を独立させることを奨励。これまで大企業の一部門でしかなかった情報システム部門を本体から切り離すことで、広く社会全体に情報サービスを行き渡らせることを狙ったものだ。大企業だけが高度な情報サービスの技術やノウハウを抱え込むのではなく、幅広いユーザー企業への“外販”を手がけることで、ビジネスを活性化させる。
日本でたとえれば、日本電信電話公社のデータ通信本部が独立したNTTデータや、同じく母体となる大手企業からSIerとしての道を歩んできた野村総合研究所(NRI)や新日鉄ソリューションズを、中国でも育てていく方針と解釈できる。
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