ビデオ(テレビ)会議システムのビジネスに変化が生じている。ベンダーは、会議だけでなく社内や拠点間を「つなぐ」システムとして、社員のコミュニケーション活性化が会社を成長に導くことを訴求しながら需要を開拓している。最近は、専用端末とウェブ会議システムとの連携、スマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスとの連携が主流になりつつあるほか、クラウドサービスでの提供も出てきており、ユーザー企業がより気軽にビデオ会議を利用できる環境が整ってきた。この特集では、ITベンダー各社によるビデオ会議ビジネスの最新事情を探った。(取材・文/佐相彰彦)
【市場動向】
「ビデオコミュニケーション」に変化
サービス化の拡大でUCとの融合も
調査会社のシード・プランニングがまとめたビデオ会議システム関連の市場動向によれば、ユーザー企業がビデオ会議システムを使って社内のコミュニケーション活性化を図っていることから、今後は「ビデオコミュニケーション」として製品・サービスが変化するという。とくに、クラウドサービスによるビデオコミュニケーションの需要が高まって、市場はさらに拡大。ベンダーにとっては、大きなビジネスチャンスとなる可能性がある。
●2016年の市場規模は610億円に シード・プランニングによれば、専用端末をはじめ、ウェブ会議や音声会議、MCU(多拠点接続装置)を含めた国内ビデオ会議関連市場は、2010年に328億円、11年に345億円規模になるとみられる。12年は376億円を予測している。
伸びる要因について原健二・リサーチ&コンサルティング部エレクトロニクス・ITチーム2Gリーダ主任研究員は、「ビデオ会議関連ビジネスに新しく参入するプレーヤーが増えているため」としている。新規参入プレーヤーの例を挙げれば、オフィス家具メーカーが製品の価値を高めるために、ビデオ会議システムの設置がしやすい会議用テーブルやデスクを販売しているほか、事務機器メーカーがプリンタのネットワーク化を促すためにビデオ会議システムとの連携をアピールしている。また、通信キャリアやDC(データセンター)事業者による回線サービスを絡めたビデオ会議システムの提供が増えているという。
新しい製品・サービスの登場によって、原主任研究員は、「ユーザー企業にとって、より身近になり、会議や打ち合わせの度合いによりビデオ会議関連のシステムやサービスを使い分けるようになったのではないか」と分析。追い風を受けて、16年には市場規模が610億円にまで膨れ上がると見込んでいる。
●クラウド充実で関連市場は8000億円 
原健二
主任研究員 ハード面では専用端末だけでなくパソコン一体型ビデオ会議端末やスマートデバイスが登場し、クラウドサービスによってウェブ会議のSaaS化などが進んできていることから、シード・プラニングではクラウドサービスの普及でスマートデバイスを通じてコミュニケーションを図る企業が大幅に増えていくと予測している。原主任研究員は、「ほかの部門と簡単に打ち合わせできるようになったケースや、社員研修を実施するために活用しているケースなど、ユーザー企業がビデオ会議システムを核として各拠点をつなげるだけでなく、サービスとの連携や複数のデバイスをつなげるなど、用途に変化が生じている」という。今後はビデオ会議関連市場が大きく拡大して、「ビデオ会議システムが『ビデオコミュニケーション』となり、将来的にはUC(ユニファイドコミュニケーション)の機能を融合させた新しいコミュニケーションが出てくるようになるのではないか」とみている。UCの機能であるプレゼンス(在席確認)や、音声情報から文字情報に変換するユニファイドメッセージングなどが連携するようになれば、顧客向けサービスの向上にもつながり、さらに需要が増える可能性が高い。シード・プランニングでは、2020年にビデオ会議関連を含めたUC市場の規模として8000億円と予測している。
市場拡大の可能性を秘めていることからも、ベンダー各社はビデオ会議システムを中心としたビジネスに力を注ぎ順調に業績を伸ばしている。次項では、主要なベンダーの強みや事業拡大策について取り上げる。
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