電話やメール、ビデオ会議など、さまざまなコミュニケーション手段を統合するユニファイドコミュニケーション。国内のUC市場は、米国に比べて浸透が遅れているといわれるものの、ようやく伸びはじめたところだ。2008年から、UCのさらなる普及を目指して、ベンダー間の連携が加速している。今後、スマートフォンの普及や節電対策などとして在宅勤務ソリューションの需要拡大が、市場に刺激を与えている。(文/ゼンフ ミシャ)
figure 1 「市場動向」を読む
2015年には2000億円を突破する見込み
調査会社のIDC Japanによると、国内UC市場は、東日本大震災の影響を受けて2011年は前年比でやや落ち込んでいるが、2012年以降は復興需要の本格化や景況感の回復などによってプラス成長に転じる見込みだ。IDC Japanは、2010年の国内UC市場規模(エンドユーザー売上額ベース)を約1800億円とみており、2015年をめどに2000億円を突破すると予測している。
UCの製品・ソリューションは、日本市場ではUCベンダーがハードウェアとアプリケーションの連携に積極的に取り組んでいなかったり、企業が直接の面談を重視してウェブ会議などを導入するニーズを感じていないなどの理由から、米国やヨーロッパと比べてなかなか普及が進まないといわれてきた。しかし、2010年からスマートフォンの法人利用が増えるなど、社員の所在を問わないワークスタイルが定着しつつあることから、UCの需要は高まってきている。今後、UC市場をけん引していく商材は、プラットフォームなどのハードウェアに加え、UCアプリの可能性が大きいといえそうだ。
国内UC市場エンドユーザー売上額実績と予測
figure 2 「主要プレーヤー」を読む
ベンダーがひしめくUC市場、トップシェアはNEC
UCは、ハードウェアやソフトウェア、通信などさまざまな分野が絡み、ベンダーがひしめいている状況だ。IDC Japanによると、2010年の国内UC市場のベンダーシェアでトップ4は、NECが20.0%、OKIネットワークスが15.8%、日立製作所が12.8%、富士通が10.7%。このほかの主要プレーヤーは、UC基盤ソリューション「Unified Communications Manager」などを展開するシスコシステムズや、UCソフトウェア「Lotus Sametime」を提供する日本IBM、次世代UCプラットフォーム「Lync」を昨年発売した日本マイクロソフト、UCシステムの機能が使えるタブレット「Avaya Flare」を展開する日本アバイアなど。日本ヒューレット・パッカード(HP)は、マイクロソフト、アバイア、ポリコム、アルカテル・ルーセントのUC製品を統合したサービスを提供している。また、日本ユニシスグループのエス・アンド・アイ(S&I)は、スマートフォン向け発信専用ダイヤラーアプリケーション「uniConnect」を展開している。
主要UCベンダーと主な商材
figure 3 「連携」を読む
連携を通じて強みを発揮、SMB市場の開拓も狙う
UCは多様なツールを組み合わせることを特徴としているので、普及を促進するためには、メーカーと販社、メーカー間の緊密な連携が欠かせない。2008年から、UCのプレーヤー間の協業が活発になっている。08年、NECとIBMは、NECの「UNIVERGE」とIBMの「Lotus Sametime」で提携した。また、NECは2010年にネットワークインテグレータ(NIer)の三井情報とUC分野でパートナーシップを組み、三井情報はNEC製品のインテグレーションを核としたUCオフィスソリューションの販売やシステム構築、保守サポートを提供する。富士通は09年にシスコシステムズと戦略的提携し、ソリューションの開発/サービスの提供/プロモーションを共同で行う。両社は連携によってUC事業の拡大に取り組んでいる。また、OKI(沖電気工業)の100%子会社であるOKIネットワークスは、2010年、パナソニックシステムネットワークス(PSN)とPSNの販売子会社、パナソニックCCソリューションズ(PCCS)と、国内IPテレフォニー分野で協業した。プレーヤー間の連携が進んでいる背景には、数社のUC製品/ソリューションを融合させることによって使いやすさや低価格を実現し、中堅・中小企業にとってUCを導入しやすくするなど、SMB市場の開拓戦略がある。
UC業界での主な提携
figure 4 「ニーズ」を読む
在宅勤務ソリューションとして企業にアピール
IDC Japanが行った2010年の「国内UC市場のユニファイドアプリケーション・機能の導入状況に関するユーザー企業調査」では、ユニファイドアプリケーションの導入率が上昇し、とくに電話・ウェブ会議やビデオ会議を含む「IP会議システム」は、2009年調査と比較して8.6ポイントも増加している。また、通話履歴機能やプレゼンス機能、業務アプリケーション連携に関して、ユーザー企業のニーズが高いとみることができる。IDC Japanは、UCの展開では、モバイルシステムやソーシャルメディアとの連携が必要としている。
今後は、節電対策として社員が会社に出勤しなくても仕事ができる在宅勤務の需要拡大が予測されており、UCを在宅勤務に最適なソリューションとして訴求することによって、ベンダーにとって新たなビジネスチャンスが生まれると考えられる。また、スマートフォンの法人利用が急増していることからすれば、「スマートフォン×UC×節電対策」の三つを組み合わせることが、ユーザー企業にUC商材をアピールするために有効な切り口になるだろう。ただ、UCは使いこなすために高度なITスキルが必要な製品・ソリューションが多いので、いかに多くの社員が簡単に利用できる仕組みを実現するかが、今後の展開のカギを握っている。
ユニファイドアプリケーション/機能の導入状況(2010年)