●【導入提案1】ソフトバンク・テクノロジー
クラウドストレージと組み合わせる
外出先から社内データにアクセス スマートデバイスで、メールを閲覧することや、社内のSNSやポータルを通じて社内情報を収集することに加えて、社内データにアクセスしてオフィス文書を閲覧するには、端末認証や端末管理を含めてセキュリティを強化することが必要となる。ただ、万全なセキュリティ対策を施すには、社内システムをリプレースするなど、莫大なコストがかかる。これがスマートデバイスを有効活用できない理由となっていた。
このような問題を解決したのがソフトバンク・テクノロジーだ。同社は、トライポッドワークスが提供するクラウドストレージサービス「DirectPOD」の取り扱いを開始、タブレット端末を使って社外から社内ファイルサーバーや自席のパソコンなどにアクセスし、データやドキュメントを閲覧できる環境を実現した。加えて、端末認証や端末管理などを組み合わせてセキュアなアクセス環境でタブレット端末が使える「ダイレクトアクセスソリューション」を提供。クラウドストレージと組み合わせ、しかもセキュリティを強化することで、需要を掘り起こしていく方針だ。
DirectPODを含めたダイレクトアクセスソリューションを導入すれば、ユーザー企業の営業担当者などは社内にある資料が急に必要となった場合に入手でき、外出時に必要なファイルを事前に準備する手間を省くこともできる。また、オプションの「ペーパーレス会議機能」によって、会議の参加者同士で資料を共有できる。鈴木重雄執行役員は、「セキュリティの問題を解決しながら、タブレット端末で実現できる範囲を広げることで、需要を掘り起こしていく」としている。同社では、今後3年以内にDirectPODのユーザー企業を500社獲得し、2億円の売り上げを見込んでいる。
●【導入提案2】富士ゼロックス
文書の閲覧・編集・印刷が可能に
プリンタの有効活用で用途を広げる スマートデバイスを導入するメリットの一つとして挙げられ、業務効率化やコスト削減につながるといわれているのが「ペーパーレス化」だ。ただし、ぺーパーレス化はプリンタ業界を厳しい状況に追い込む可能性がある。プリンタメーカーの富士ゼロックスは、このような問題を解決しようと、「モバイルワークを支えるソリューション・サービス」という名称でスマートデバイスに対応したアプリケーションを提供している。
1月30日に提供を開始する「モバイル統合アプリケーション for iOS」は、複合機でスキャンした文書やiPadで撮影した画像をアプリケーションに直接取り込み、取り込んだコンテンツを表示・編集し、複合機からのプリントやメール送信の操作をワンストップで行うサービスだ。モバイル環境で要求されるドキュメントハンドリングの機能を統合することで、煩雑な作業をシンプルにするという。
また、1月25日に提供を開始したオンプレミス型の文書管理システム「DocuShare」やクラウドストレージサービスの「Working Folder」とも連携。柳瀬努執行役員は、「紙の文書をデータ化して整理できるので、プリンタを通じてタブレット端末の用途を広げることにつながる」とアピールする。
2月11日には、オフィスとモバイル環境のシームレス化と外出先での文書プリントニーズに対応した「パブリックプリントサービス」の提供と、専用カラー複合機シリーズの販売を開始する。柳瀬執行役員は、「自治体、大学、店舗、ホテル、カフェなどに設置した複合機で印刷できるので、プリンタのリプレースを促進できるのではないか」とみており、事務機ディーラーがプリンタを拡販することにもつながると捉えている。
●【導入提案3】丸紅アクセス
端末の管理から活用までを網羅
店舗では接客用端末の用途に ユーザー企業がスマートデバイスの管理を重視するあまり、活用を後回しにするケースがあり、法人市場でのスマートデバイス普及を鈍らせている要因となっている。ユーザー企業にスマートデバイスの役立つ使い道を訴えることが案件の獲得につながる。
そのなかで、丸紅アクセスソリューションが提供しているMDM(モバイル端末管理)サービス「VECTANT SDM」は、端末の管理だけでなく活用を視野に入れている点がユーザー企業に好評のようだ。このサービスは、スマートフォンやタブレット端末の管理や制御、盗難や紛失など緊急時のリモートロックなど、MDMの基本的な機能に加え、社内の連絡事項などを各端末に暗号化して配信するコンテンツ関連の機能も提供している。ウェブカメラを操作したり、映像を閲覧したりする機能もオプションで用意している。橋口信平・営業本部モバイルソリューションチーム部長は、「端末を使う社員がそれを業務に生かすことが重要だ。端末を管理しながら有効活用できることを重視した」と差異化した点を説明する。
このサービス機能が受け入れられて、カー用品専門店を展開するオートバックスセブンをユーザー企業として獲得。オートバックスの店舗では、スタッフが接客しながらタブレット端末で即座に在庫の検索・確認などをすることができる。13年3月までに全国300店舗強、約1000台のタブレット端末を導入することを予定している。
橋口部長は、「次のステップとして、デジタルサイネージも提案している。流通業を中心に需要を掘り起こす」ことを計画している。同社は、「VECTANT SDM」を12年4月に提供開始しており、提供後1年間で3万台、2年後に10万台、3年後に100万台の導入を目指す。
●【導入提案4】サイバーステーション
デジタルサイネージと連携
販促ツールとして用途拡大 電子看板としての活用から始まり、今やその用途がコミュニケーションツールとして広がっているのがデジタルサイネージだ。そのデジタルサイネージを切り口として、スマートデバイスの用途が広がる可能性が出てきている。サイバーステーションでは、クラウド型デジタルサイネージシステム「デジサイン」に、タブレット端末に対応する「デジサインTab」を提供している。
「デジサインTab」は、持ち運びできる端末に対応したことで、社内で情報閲覧用として、外出先でもタブレット端末を通じて社内情報を閲覧できるだけでなく、取引先への電子カタログやプレゼンテーションなどにも使える。情報は、ユーザー企業のシステム管理者などが一括で管理し、すべてのスタッフが常に最新の社内情報や電子カタログを利用できるというのがメリットだ。
「デジタルサイネージは、店舗で販促システムとして導入されるだけでなく、社内のデータや情報を全社員で共有できるシステムでもある」(福永泰男社長)というコンセプトで、同社はオフィス向けにデジタルサイネージの普及に力を注いでいる。デジタルサイネージを付加価値と捉え、スマートデバイスの拡販につなげることも、大きなビジネスチャンスを生む可能性がある。
●記者の眼 ユーザー企業のタブレット端末の導入目的でニーズの高い「販売活動」と「オフィス文書閲覧」の導入提案を中心に紹介したが、スマートデバイスを切り口としたビジネスは、まだまだ広がりをみせそうだ。指タッチ式というパソコンとは異なった操作が物珍しいと捉えて、「業務上で何かに使える」とスマートデバイスを導入するユーザー企業がいたという話を、ある業界関係者から聞いたことがある。ただ、ユーザー企業が導入してから用途が見出せず、しかもベンダーが用途を提案しなかったために、そのユーザー企業にとってはスマートデバイスが“宝の持ち腐れ”になってしまった。
このような例も踏まえて、今はスマートデバイスを個人で使う傾向が高まっていることからも、単なる端末の提案ではユーザー企業が導入しない。ユーザー企業のワークスタイルを踏まえて、その改善を図るためにスマートデバイスを提案していくことがビジネスを拡大する重要なポイントとなる。