「XP」ユーザーの課題を解決するMSパートナーの施策
●“わからない”を解決 
大塚商会
坂本次朗 氏 大塚商会は、「Windows 8 導入相談センター」を立ち上げ、OSの移行に向けた企業向け個別説明会から、アプリケーションの検証、改修・開発、導入支援コンサルティング、キッティング(設定)、導入後のユーザー教育やサポートまでワンストップで提供するサービスを提供している。マーケティング本部Office 365 プロモーション課の坂本次朗氏は、「『Windows 7』や『Office 2010』への移行支援は2009年頃から行っており、ノウハウも蓄積している。ハードウェアからライセンス、マクロ検証など、一連のOS移行に必要なサービスをすべて取り揃えて、ユーザーの課題を解決できる体制を敷いている」と説明する。アプリケーションの互換性検証や改修などに時間がかかり、どうしてもサポート切れまでにOSを移行できないユーザーが出てくるとしても、こうした豊富なメニューを揃えることで、できるところからOSの移行を前倒しに進めてもらうというわけだ。
また、SMBでは、サポート切れを知ったばかりのところが多いとみて、4月8日に相談窓口である「Windows XPサポート終了かけこみ寺」を設けた。OSの移行に関して何から始めたらいいかわからないというSMBに対して、入れ替え前の事前調査からアフターサポートまでのサービスを提供する。とくに、ワークショップでは、「いきなり具体的な提案をするのではなく、まずは基本的なことから伝えて、お客様のシステムにどれだけの課題があるのかを把握してもらい、その後の対応を決めていただいている」(坂本氏)。また、「Windows 8」デバイスの無償貸し出しキャンペーンも行っている。
さらに、「XP」のサポート切れとあわせて、「Office 2003」のサポートも終了することから、クラウドサービス「Office 365」を同時に提案している。「Office 365」は、常に最新の状態に更新され、今後のOSのサポート切れも影響を受けることがないので、OSの刷新とあわせて売りやすいわけだ。
●互換性の検証が最大の問題 
CSK Winテクノロジ
古宮浩行
社長 CSK Winテクノロジの古宮浩行社長は、「OSの移行に関するユーザーの課題は、IE6(Internet Explorer 6)で開発したウェブシステムや、古いVB(Visual Basic)で開発したクライアントサーバー型のアプリケーションが動かなくなることと、OfficeのExcelで、マクロが動かなかったり、エラーが生じたりすることだ」と指摘する。CSK Winテクノロジでは、とくにOfficeに関する課題を抱えているユーザーが多いとみて、「Office導入支援センター」をおよそ4年前に立ち上げて、「Microsoft Office展開支援サービス」として、マクロ互換性検証から、レイアウトの互換性検証、機能検証支援、Officeファイルの改修、サポートまでを提供してきた。サービスは、年間数十件をコンスタントに受注しており、今回の「XP」サポート切れでさらなる需要を見込んでいる。
古宮社長は、「大企業は移行がかなり進んでいるが、市場にはまだまだ『XP』が残っているので、サービスの拡張を検討している」という。そこで、「XP」移行に関するの専用窓口を設置し、「Officeの展開支援に加えて、VBやIEに関する互換性の検証などのニーズにも応えていく」(古宮社長)としている。また、大規模顧客がユーザーの大半を占めるが、こうしたサービスを皮切りにSMBユーザーの獲得も視野に入れている。
さらに、デスクトップ環境の仮想化など、OSの移行を支援するだけでなく、周辺ソリューションを組み合わせて提供していく考えを示している。古宮社長は、「とくにPCのハードディスクを暗号化して、クラウド上から集中管理できるサービス『Perfect Watch for BitLocker』は、近年問い合わせが急増しており、OSの移行とあわせてセキュリティを担保することができる」と説明する。CSK Winテクノロジでは、こうしたソリューションを含めて、「XP」関連で数億円程度の増収が期待できるとみている。
●コストの問題を平準化で解決 
ピーエスシー
岡野太士
取締役 OS移行に関して、コストは無視できない問題となる。大手企業では、数年かけて計画的に刷新していることから、コストが問題になることはあまりないが、まだ計画を立てていない企業も多いSMBでは、PC資産の棚卸をしていなかったり、アプリケーションの改修などで、予期していなかった作業が加わったりして、見積もりを取った結果、今年度中の予算では対応できないケースもある。ピーエスシー(PSC)営業統括本部長の岡野太士取締役は、「大手企業はすでに計画済みでも、その下のグループ会社には情報がうまく伝わっておらず、予算を計上できないケースがある。また、SMBでは、情報システム部門が仮にあったとしても、経営層がOS乗り換えの必要性に詳しくなく、対応できないところもある」と説明する。
こうした背景から、PSCでは、OSの移行費用を月額料金制で提供する「GO TO 8」キャンペーンを実施している。移行の初期にかかる費用を軽減することで、少ない予算でもOSの移行を進めることができる。PSCでは、PCのライフサイクル全体のアウトソースサービスを5年ほど前に開始しており、これまでに約30万台のPC環境の移行を支援してきた実績をもっている。「GO TO 8」は、PCライフサイクルマネジメントサービスのメニューの一つとして提供する。
岡野取締役は、「従業員数1000~5000人程度の中堅企業がメインターゲット。法人市場には約1400万台の「XP」が残るが、このうちの20万~30万台程度の移行を当社が進めたい」と意欲をみせる。
また、SMBはOSの移行が遅れるとの見通しがあって、サポート切れに合わせてユーザーからの発注が激増する可能性もあるが、PSCでは、OS移行を専門に扱うセキュアセンターを設置して、およそ100人のSEと専門の移行担当者130人の体制を敷いており、大量のOS移行にも対応できるようにしている。
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