CIer――機敏さを生かして海外で攻勢をかける
●【クリエーションライン】カンボジアでクラウド構築の草分けに 今年11月、「Cloud Expo Asia」というイベントがシンガポールで開催された。東南アジアのクラウド商材を披露する初めての大型イベントに、各国のベンダーが出展。注目を集めたのは、日本の小規模CIerであるクリエーションラインのシンガポール子会社だった。「クラウド構築を日本の品質で」──。来場者は、ブースで訴求した国内実績を評価し、同社のサービスに高い関心を示した。
2006年設立のクリエーションラインは、クラウドエンジニアを中心とする約30人の従業員を抱えている。国内の大手通信キャリアやDC事業者にクラウド環境の構築を提供しており、現在の年間売上高はおよそ2億円だ。決して規模が大きいとはいえない同社だが、ライセンス販売を手がけているインフラ構成管理ツール「Chef(シェフ)」などを商材として、積極的にアジア進出に取り組んでいる。
今年5月、カンボジアに、現地ベンダーとの合弁会社である「CL & TAG」を設立。11月には、シンガポールで子会社を立ち上げた。今後の5年間、海外事業を売り上げのメインにすることを目指して、ベトナムやミャンマー、インドネシアなど、東南アジア各国への進出を視野に入れている。
安田忠弘社長は、「ここ2~3年、日本の通信キャリアが一気にシステムをクラウド化した流れが、今後、東南アジアにも広がる」と捉え、市場開拓を急ぐ。カンボジアでは、現地の主要通信キャリア6社と商談を進め、政府関係者とも話を詰めているところだ。「通信環境がすぐれており、他社がまだ目をつけていない」(安田社長)カンボジア。ここでクラウド構築の実績を上げて、ほかの国に横展開することによって、2017年までに売り上げを80億円に拡大。そのうち、約60億円を海外で稼ぐことを目指している。
成長のエンジンとするのは、「Chef」を活用した独自サービスの展開だ。「Chef」は、ミドルウェアの構成を抽象化して共通定義するツール。サーバー構成をコード化して自動で構築することにより、人的リソースの削減を実現する。米Opscodeが開発したものだ。
国内で唯一の販社であるクリエーションラインは「Chef」を使い、クラウドの構築や運用をサポートするサービス「Re:cook(リクック)」を、この12月に発売した。クラウド構築や構築後の運用を一元管理できることを訴えて、国内で金融機関を中心とする大手ユーザー企業に提供するほか、カンボジアなど海外でも売り込む。「Re:cook」をツールに「Chef」の使い方を示し、SIerに提供するなど、「Chef」の拡販にもつなげる構想だ。

クリエーションラインの安田忠弘社長。椅子やテーブルを自由に使うことができるオフィス環境を整え、従業員の発想力を刺激する ●【テラスカイとサーバーワークス】米国に「おもてなし」のクラウド連携を 
サーバーワークス
大石良社長 IOC(国際オリンピック委員会)総会での滝川クリステルさんのプレゼンテーションをきっかけとして、世界で注目を浴びるようになった日本の「おもてなし」。今年9月に資本業務提携したCIerのテラスカイとサーバーワークスは、「おもてなし」を提案の切り口として、AWSとSalesforceを連携してハイブリッドで利用できるようにするサービスを米国で売り込もうとしている。
提携した両社は、重要データを扱う基幹システムの移行先として評価されるSalesforceを強みとするテラスカイと、主に基幹以外のシステムをクラウド化するための基盤として使われるAWSの構築実績をもつサーバーワークスの技術リソースを組み合わせ、「ハイブリッドクラウドソリューション」として提案する。サーバーワークスの大石良社長は、「これまで『ハイブリッド』はオンプレミスとクラウドの融合を指していた。これからは、AWSやSalesforceなど、複数のクラウドを組み合わせるという意味で『ハイブリッド』を実現するプロ集団を目指したい」としている。

テラスカイ
佐藤秀哉社長 AWSとSalesforceをハイブリッドで利用できるメリットは、例えばAWSを導入しても、すでに使っているSalesforceプラットフォーム上のSaaS型アプリケーションをそのまま使い続けることができるといった点にある。ユーザー企業は、それぞれのシステムに最適なクラウドを採用したいと考え、「ハイブリッドクラウドソリューション」の需要は旺盛な模様だ。テラスカイの佐藤秀哉社長は、「Salesforceのお客様から『AWSも提案してほしい』との要望を受けることが多くなっている。こちらから積極的に営業をかけなくても、案件が入ってくる」として、CIerらしく「プル型営業」に期待を寄せているという。
両社が「ハイブリッドクラウドソリューション」の有望市場と捉えているのは、AWSとSalesforceのユーザー企業が最も多い米国だ。テラスカイは12年9月、カリフォルニア州サンノゼに米国法人を設立した。これを拠点として、14年、クラウド連携の提案活動に力を注ぐ。
テラスカイの佐藤社長は、「クラウドの連携に関して、実は日本のほうが進んでいる。国内で培ったノウハウを生かし、おもてなし精神を前面に押し出して、米国のお客様を獲得したい」と、市場開拓に意欲を示す。両社で「ハイブリッドクラウドソリューション」の展開によって、3年間で10億円の売り上げを目指すという。
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