インテグレータからみたForce.com vs kintone
Force.comやkintoneは、システム構築はもちろん、提案段階にも大きな影響を及ぼしているという。最初の要件を聞く段階で、いきなりシステムとして動く画面を提示できるようになったからだ。製造業でモックアップ(モック)を使うのと同様か、それ以上のことが、システム開発の現場で起きているのである。しかも、打ち合わせしながらその場で修正もできてしまう。この市場を切り拓いたForce.com。追随するkintone。インテグレータは「Force.com vs. kintone」をどうみているのだろうか。
Force.comパートナー
●ユーザー企業側も項目追加ができる
オージス総研 オージス総研がForce.comを取り扱い始めたのは、2010年。クラウドに対する注目度が高まるなか、オージス総研では大型のSI案件が減り始めていた。「新しいことに取り組まなければ、という危機感があった。その一つとして、クラウドインテグレータ(CIer)への転換を模索した」と大津尚史・ソリューション開発本部エンタープライズソリューション第二部第一チームチーフアーキテクトは当時を振り返る。そうしたなかでタイミングよく、セールスフォース・ドットコムから声がかかったという。
Force.comについて高井正敏・ITスペシャリストは「提案段階で、動くものを持参できる」と手軽さを評価する。同様に、すぐに運用に入れることから、手離れのよさも大きなメリットだと考えている。
同社のユーザー企業では、自ら入力項目を追加するようなケースもあるという。「ユーザーから『項目を足したので見てほしい』という連絡が来ることも。従来なら3日はかかっていた」と林和彦・ITスペシャリストは語る。
一方で、ビジネスロジックのつくり込みができる点も評価している。「小さくつくって大きく育てられる」と林ITスペシャリスト。ただし、つくり込みは最小限にしたほうがいいという。「Force.comのバージョンアップがあっても、つくり込みした部分には反映されない。標準機能のままのほうが、メンテナンスもしやすい」と、大津チーフアーキテクトはどこまでつくり込むかのバランスが必要だと考えている。
オージス総研はkintoneを扱っていないが、動向は気にしているという。ただし、現時点ではForce.comのほうが同社のシステム構築案件に向いていると判断している。

(左から)高井正敏・ITスペシャリスト、大津尚史・チーフアーキテクト、林和彦・ITスペシャリスト ●エンジニア視点のつくり込みしやすい開発環境
鈴木商店 
徳島クラウドオフィス「美雲屋」からウェブ会議システム経由でインタビューに応じた鈴木商店 鈴木史郎代表取締役社長 “大阪のクラウドシステム株式会社”を掲げ、クラウドサービスを活用したシステム構築やコンサルティングを手がける鈴木商店。オフィスの徹底的なクラウド化を目指した徳島クラウドオフィス「美雲屋」でも注目されるCIerだ。同社で扱っているクラウドは、IaaSがAWS(Amazon Web Services)、PaaSがForce.comである。
両者の違いについて、鈴木史郎代表取締役社長は次のように考えている。「簡単なシステムかどうか。標準機能が当てはまり、ある程度のつくり込みで済むなら、Force.com。凝ったことをやろうとすれば、Force.comよりもAWSを活用してフルスクラッチで開発したほうがいい」。

Force.comを担当している鈴木商店の山田真也氏 同社のForce.com案件で多いのは、部門で表計算ソフトなどを活用している部分で限界を感じ、そこをシステム化するケースとのこと。表計算ソフトを活用していた部分をシステム化するのは、kintoneの得意分野でもあるが、鈴木商店ではForce.comで提案している。「確かにkintoneで対応できるという話もあるが、そこからシステムを成長させたいときにどこまでできるのか。今のところkintoneはForce.comの廉価版にみえる。Force.comのほうが歴史があって、エンジニア視点でつくり込みしやすい開発環境になっている」と鈴木社長。Force.comを担当している山田真也氏も「Force.comには、つくり込んでいく楽しさ、深みがある」と考えている。今のところ、kintoneに関しては様子見の状況だそうだ。
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